中国は月面への基地建設を計画していますが、その場所として有力視されているのが直径数百メートルの「溶岩洞窟」です。この月の洞窟について、海外の科学メディア「Science Alert」が詳しく解説しています。
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中国、月に基地建設を計画
月の探査軌道衛星ルナー・リコネサンス・オービターは、数百箇所の月の「天窓」を発見しました。これは溶岩洞窟の天井が崩れ、洞窟の中に自然な開口部ができた場所です。溶岩洞窟は月の表面を流れていた溶岩が冷え始めたときに形成されました。流れ出た溶岩の上部には固まった地殻が形成され、その下には溶けた溶岩が流れ続け、やがて流出して空の洞窟ができました。月の火山活動はいつ終わったのかよくわかっておらず、10億年前まで遡る可能性もあります。
月で作業するには様々な危険が伴います。例えば温度差です。月の片側は1日の半分が直射日光に照らされ、表面温度は127℃にも達する一方、暗闇に包まれた側は-173℃まで下がります。このような大きな温度差に対応できる装置を設計・製造するのは容易ではありません。他にも地表の150倍もの放射線や、衝突物のリスクもあります。溶岩洞窟であればこれらの危険から身を守ることができるかもしれません。
様々な国や機関の科学者チームが、溶岩洞窟をシェルターとして利用するアイデアを研究してきました。最近中国で開催された会議では、上海航天技術研究院の張崇峰氏が溶岩洞窟の地下世界に関する研究を発表しました。張氏によると、溶岩洞窟には垂直と傾斜の2種類の入口があると言います。張氏が発見したものはほとんどが垂直開口の洞窟でした。しかし、ここから中に入るには飛行するか垂直上昇装置が必要です。一方、傾斜した入口の方が出入りがはるかに容易です。ローバーがそこに乗り込むことも可能で、探査を容易にする望ましい入口だと言います。
中国は、「静かの海」と「豊かの海」にある月の溶岩洞窟を優先的に探査しています。一次探査機には車輪か足が取り付けられ、困難な地形に適応し、障害物を克服できるような設計がなされています。また、科学的なペイロードも搭載しているとのこと。さらに、マイクロ波やレーザーレーダーを使って溶岩洞窟の中を自律的に進むことができる飛行可能なロボットも計画しています。
探査成功後、中国は有人基地を作る計画をしています。長期的な地下研究基地や、エネルギーと通信のサポートセンター、そして居住施設を設置するといいます。中国の宇宙活動は今、勢いを増しています。華中科技大学のトップ科学者である丁立雲氏は、『中国科学報』の取材に対し、「最終的には、地球の外に居住施設を建設することは、宇宙探査を目指す全人類のためだけでなく、宇宙大国としての中国の戦略的ニーズにとっても不可欠だ」と語っています。
研究者たちは、NASAの火星探査機ミッションと同様の5年間の長期ミッションを計画しています。5年後には、中国の探査機が豊かの海を探査し月面基地の建設地を選定しているかもしれません。