スタンフォード大学のマーク・カトコスキー教授は、ヤモリの手を参考に「不思議な新素材」を作りました。この新素材は普段はサラサラしていますが、条件が当てはまれば強力にくっつきます。この不思議な新素材について海外YouTubeチャンネル「Veritasium」が解説しています。
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ヤモリの手を参考に作られた新素材とは?
今回、作り出された新素材はサラサラしていてテープのような粘着性はありません。しかし、荷物を持ち上げることができます。また、簡単に取り外せて繰り返し使用できることも特徴です。カトコスキー教授は基本的に滑らかな面であればどこにでも付着させられると述べています。
この新素材はヤモリの手を模倣して作られました。ヤモリの手にはクモや昆虫のような「毛」や「トゲトゲ」はありませんが、吸盤よりも強力な粘着力を持っています。カトコスキー教授によるとヤモリは片方の足の一部だけで全体重を支えることができるとのことです。
ヤモリの手の表面は、1マイクロメートル未満の信じられない程の細かい剛毛に枝分かれしています。表面が細かい構造に分かれているため、壁などにぴったりフィットさせることができます。
ヤモリの手の秘密はそれだけではありません。ヤモリは中性原子間の引力を利用しています。中性原子間の引力とはどのような仕組みなのでしょうか?
例えば、ヤモリがガラスの壁を登っていたとします。ヤモリの原子もガラスの原子も中性です。
原子内の電子は必ずしも原子核の周りに均等に分布しているわけではありません。つまり片方にプラスが帯電し、もう片方にマイナスが帯電することがあるということです。そして非常に近い距離に原子があった場合、電荷の不均衡が引き起こされます。そのようになるとお互いの原子は引き合い、くっつきます。この現象をファンデルワールス力といい、この仕組みでヤモリは壁を登っているのです。
現在の技術ではヤモリの手を完全に再現することはできません。しかし、大まかな真似はできると考えられ、人工ヤモリの手が作られました。
人工的に作られたヤモリの手を拡大すると、ヤモリ程ではありませんがトゲトゲがあります。先端の幅は約1~2マイクロメートルです。これは人間の髪の毛の100倍の細さです。
このトゲトゲは物に押しつけられると平らになります。そして、ヤモリのように対象物にぴったりフィットします。
接着するためには、一定の方向に引っ張る必要があります。
言い換えれば、横や斜めに引っ張った場合はくっつかないということです。この特性があるからこそ、人工ヤモリの手は対象物に接着をしても簡単に取り外せて、接着をくり返すことができるのです。この特徴が一般的なテープとの違いです。
カトコスキー教授のチームは人工ヤモリの手を利用した小さなロボットを作成しました。このロボットの重さはわずか17グラムです。しかし、20キログラムの重りを引っ張ることができます。
この小さなロボットが6台あれば車も引っ張ることができます。
また、この技術は宇宙ステーションでも活用されています。宇宙は無重力のため重たい機械でも人工ヤモリの手を利用すれば簡単に壁に固定でき、必要な時に取り外すことができます。
この技術が活用されれば、ヤモリのように建物の壁を登ったり、フルーツなどのデリケートな物を傷つけることなくピッキングできるようになるとのことです。