有名な “アイスマン”のミイラのDNA分析が新たに改良されました。すると我々が想像していたのとはちょっと違う人物像が浮かび上がったのです。
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アイアンマンの本当の姿とは
1991年にイタリアのエッツタール・アルプスで、5300年前に存在していた46歳の男性のミイラが発見されました。エッツィ(Ötzi)というニックネームで呼ばれ、無傷で発見された最古の人体として世界中を魅了してきました。これまでの研究では毛深い白人の狩猟採集民だと考えられていました。しかしドイツのマックス・プランク研究所の進化人類学者ヨハネス・クラウス氏の研究によると、エッツィは、比較的浅黒い肌と禿げた頭を持つ農民であった可能性があるということが判明しました。
The genome analysis revealed phenotypic traits such as high skin pigmentation, dark eye color, and male pattern baldness that are in stark contrast to the previous reconstructions that show a light skinned, light eyed, and quite hairy male.
— 引用:EurekAlert
「ゲノム解析の結果、高い皮膚色素、黒い目の色、男性型脱毛といった表現形質が明らかになりました。これは、明るい肌、明るい目、かなり毛深い男性というこれまでの復元とはまったく対照的です。(EurekAlert)」
エッツィに関する最初のゲノム研究は2012年に行われ、この人物が現在のサルデーニャ人と近縁であるという証拠が発見されました。そのため、彼は東部の狩猟採集民とコーカサスの狩猟採集民が5千年紀に合併した集団の子孫であると考えられていました。しかし、今回の新たな研究では、この種の祖先が検出されなかったのです。その代わりに、エッツィのゲノムから異常に高いアナトリア農耕民の祖先が発見されました。
These early agriculturalists, who lived in the land sandwiched between the Mediterranean and Black seas, are thought to have migrated into Europe and mixed with local hunter-gatherers. But Ötzi didn’t carry much European hunter-gatherer DNA, hinting that his lineage was genetically isolated from other Europeans at the time.
— 引用:nature
「地中海と黒海に挟まれた土地に住んでいた初期の農耕民は、ヨーロッパに移住し、地元の狩猟採集民と混血したと考えられています。しかし、エッツィはヨーロッパの狩猟採集民のDNAをあまり持っておらず、彼の血統が当時のヨーロッパ人から遺伝的に隔離されていたことを示唆しています。(nature)」
この発見は、エッツィがアナトリア(トルコ)の新石器時代の農民の系統と密接な関係があったことを示唆しています。その後、彼らはイタリアに移住し、アルプス山脈で比較的孤立して暮らしていたようです。
エッツィのゲノムから、研究者たちは、農耕民族の食生活と、現在のヨーロッパの集団に見られる一般的なものより黒い皮膚の色素沈着の証拠を発見しました。また、男性型脱毛症のリスク対立遺伝子も発見されました。この発見は、ミイラそのものの外見と一致している、とクラウス氏は説明します。そして、一個体ではその時代と地域の人口史を表現するには限界があるものの、イタリアで発見された他の古代人の特徴とも一致していることが判明したのです。例えば、南アルプス付近で発見されたある遺体は、最近のゲノム研究でもアナトリア人と農耕民族に関連する高い祖先を示していました。「今回の研究結果を再現し、アイスマンが異常値であったのか、それとも彼の集団を代表するものであったのかを明らかにするためには、南アルプスからのサンプリング密度を高めた今後の研究が必要でしょう」と研究者たちは結論付けています。