イタリア人はイタリア料理をとても大切にしています。ピザの正しいトッピングやボロネーゼに使うパスタについては多くの人がこだわりを持っています。そんな中、ノーベル賞を受賞したイタリアの物理学者が、とあるパスタの茹で方を提案したところ、大騒動になったのです。
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ノーベル物理学者おすすめのパスタの茹で方
ジョルジョ・パリージ教授（「原子から惑星のスケールまでの物理システムの無秩序と変動の相互作用の発見」で2021年のノーベル物理学賞を受賞）が提案したパスタの茹で方は従来のものとは少し違います。パスタを茹でる途中で火を止め、蓋をして余熱で温めるというものでした。これによってパスタを茹でるコストが削減できるのです。
これに対し、ミシュランの星付きシェフ、アントネッロ・コロンナ氏は、このやり方ではパスタがゴムのようになってしまい、自分の店のような高級レストランでは絶対に出せない、と主張しました。この論争はすぐにメディアに飛び火し様々な議論を巻き起こしました。
しかし、一般家庭の人々にとって、パリージ教授の方法は費用対効果の観点から見てメリットはないのでしょうか？そして、本当に味は悪いのでしょうか？イギリスのノッティンガム・トレント大学の学生によって、様々なパスタの調理方法が検証されました。
パスタを茹でる時、何が起こっているのか？
パスタを茹でるとき、実際に何が起こるのでしょうか？乾燥パスタの場合、沸騰したお湯の中にパスタを入れることで通常2つの工程が並行して行われます。まずはパスタに水が浸透し約10分ほどで柔らかくなります。次に、パスタが加熱され、タンパク質が膨張して食べられるようになるのです。標準的な調理法では、100gのパスタを1Lの熱湯に入れ、太さによって10分から12分かけて茹でます。 エネルギー使用量の内訳は下の図のとおりで、エネルギー価格とコンロの種類によって、総費用に換算することができます。
現在の価格では、セラミックコンロで乾燥パスタを茹でた場合、1食あたり12.7ペンス（約23円）、IHコンロで10.6ペンス（約19円）、ガスコンロで7ペンス（約13円）となります。パスタが大好きなイギリス人は、平均して週に1人前を食べます。つまりイギリス全体でパスタの調理に一週間あたり約835万米ドル（約11.8億円）を費やしていることになります。図から明らかなように、エネルギーの約60％はお湯を沸かし続けるために使われています。つまり、調理時間を短縮することができれば、全体のコストに大きな影響を与えることになります。
途中でコンロの火を止め、余熱でパスタを茹でるというパリージ教授の方法は、調理コストを半減させ、約3ペンス（約5円）の節約になります。ガスやIHと違い、セラミックコンロは冷めるのが遅いので、この方法はさらに効果的となるでしょう。そして水戻し工程と加熱工程を分けることで、さらにコストを下げることができます。乾燥パスタであれば、あらかじめ冷水に2時間浸しておけば十分です。これはエネルギーをまったく必要としない工程で、さらに3ペンス（約5円）の節約になります。
パスタはその後、沸騰したお湯の中に入れて温める必要がありますが、ここでもさらに節約ができます。シェフ、ブロガー、科学者が試したところ、水の量を大幅に減らしても、茹で上がったパスタの品質に影響はなかったようです。しかし水の量は半分に減らす程度なら大丈夫なのですが、3分の1まで減らすのは問題があるということがわかりました。調理中にでんぷんが放出され、水分が不足すると濃縮され、茹でムラのあるパスタの塊が残るとのことです。
図によれば、2番目に大きなエネルギー消費は、お湯を沸騰させることです。ここでもまた、節約できることがあります。パスタに含まれるタンパク質の顆粒は80℃以上で溶けるため、鍋を100℃で沸騰させる必要はありません。パスタを完全に茹でるには、軽く煮るだけで十分だったのです。
浸しておいたパスタを温めるのに電子レンジを使う方法も検討されました。電子レンジはお湯を温めるのには非常に効率的ですが、実験ではあまり上手くいかなかったようです。
最も効率的なパスタの茹で方
乾燥パスタを最も効率よく茹でる方法は、あらかじめ冷水に浸しておき、沸騰したお湯やソースの鍋に1～2分入れることです。鍋には蓋をしましょう。そして塩を加えることは、沸点にはほとんど影響を与えませんが、味はかなり良くなります。
私たちは、ミシュランの星付きシェフでもノーベル賞受賞の物理学者でもありませんが、美味しい料理を作りながらエネルギーコストを削減するために、調理方法を変えることはできます。経済的で、かつお金も節約できるこの方法は試してみる価値があるでしょう。
