「6月男」と言われるほど例年6月に良い成績を残す大谷選手。今シーズンも6月は好調で、6月30日のホーム、エンゼル・スタジアム・オブ・アナハイムでのアリゾナ・ダイヤモンドバックス戦をもって、6月を終えました。
レギュラーシーズンの月別の成績は、アメリカンリーグMVPを獲得した2021シーズンは6月が最も良く、その成績は、「打率.309、打点23、本塁打13」。翌年2022シーズンは8月が最も良くて6月は2番目。8月の成績は「打率.317、打点20、本塁打8」、6月の成績は「打率.298、打点17、本塁打6」。今シーズンの6月の成績は、「打率.394、打点29、本塁打15」で月間成績では自身最高をマーク。
6月終了時点での成績は、打率.310、打点67、本塁打30で、打率はアメリカン・リーグ4位、打点及び本塁打はリーグ1位。投手としては、防御率3.02でリーグ8位、勝利数7でリーグ10位となっています。
今シーズンの6月は自身過去最高の月間打撃成績を残しましたが、この好調の原因はどこにあるのでしょうか。野球、サッカー、ラグビーをはじめとするスポーツに関して、試合結果や移籍情報などのデータを各種メディアに向けて配信しているデータスタジアム㈱の野球アナリスト・小林展久氏の解説をご紹介。
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目次
- 1. 要素1 外角球の打率が上昇
- 2. 要素2 流し打ちでの長打が増加
- 3. 要素3 ファーストストライク打撃成績の向上
- 4. まとめ
要素1 外角球の打率が上昇
2021及び2022シーズンと2023シーズン途中までのコース別打率を比べて見ると、2023はその前2シーズンよりも外角球の打率がおよそ1割も良くなっています。前2シーズンは.208、.213であるのに対して今シーズンは.310。
大谷選手は2021及び2022シーズンにおいては内角球は.329、.301、真ん中は.248、.335と好成績で、2023シーズンも内角球は.306、真ん中は.256と相変わらず好成績を維持。これに対して外角球は実は昨季までの2年間、2割そこそこでした。
また外角球では、昨季まではヒットを打ってもシングルがほとんどでしたが、今季は長打も出ている点が決定的に異なるとのこと。
この結果は、今シーズンからバットを長くしたことが大きな要因であろうと結論づけています。大谷選手は昨シーズンまで日本のスポーツ用品メーカー、アシックス社製のバットを使用しており、昨シーズンの長さは33・5インチ(約85・1センチ)。素材はバーチで重さは32オンス(約907グラム)。
今シーズンからは米国のメーカー、チャンドラー社製のバットを使用。昨シーズンよりも1インチ(2.54センチ)長くしました。重さは変わらず。
同社製バットをNPB選手に提供している「エスアールエス」の宇野誠一社長は、「現役の日本人選手で34・5インチは、かなり珍しい。落合博満選手や中村紀洋選手くらいしか思い浮かばない。まさに規格外」と話すほど長いとのこと。長くなるほどバットコントロールが難しくなる反面、しっかり操れば遠心力が増し飛距離アップにつながります。
さらに、チャンドラー社製バットの特徴は硬さ。硬く反発力が強いメープル(カエデ)材が中心で、しなりを重視する日本人選手が好むアオダモやホワイトアッシュと異なり、大リーグの強打者に好まれます。
ニューヨーク・ヤンキースのアーロン・ジャッジ選手もチャンドラー社製のバットを使用しており、大谷選手よりもさらに長い35インチのバットで昨季ア・リーグ新記録の62本塁打をマーク。
大谷選手は今春のキャンプで新しいバットについて「“打感”は硬め。自分に振りやすいように変化させた感じ。心地よくスイングできるかが一番大事」と語っています。
要素2 流し打ちでの長打が増加
流し打ちのメリットは打率が上がること。 逆らわずに逆方向に打つということはボールをギリギリまでひきつけて打つことができるようになり、変化球に対応しやすくなるからです。 打球の質がハードヒットとなるとさらに一層打率もアップ。
大谷選手の流し打ちの打球の質は、2021年はゴロ15.0%、フライ・ライナー85.0%、2022年はゴロ21.0%、フライ・ライナー79.0%であったのに対し、2023年はゴロ8.9%、フライ・ライナー91.1%。今シーズンはフライ・ライナーの割合が上がっています。これは今シーズンの流し打ちは、2021、2022年に比べてよりハードヒットしているということ。
さらに、野球アナリスト・小林展久氏が驚いているのは、6月14日のテキサス・レンジャーズ戦で大谷選手が流し打ちで放った飛距離138.1mの21号ホームラン。「右打者が引っ張ったとしても140m級はなかなか打てない。それを流して打てるのが大谷選手。」と今後の本塁打の増加を予想しています。
要素3 ファーストストライク打撃成績の向上
大谷選手のファーストストライクを打ちにいっての打撃成績は、2021年は83回振って30安打、打率.361、本塁打13本、2022年は117回振って49安打、打率.419、本塁打12本、2023年は63回振って31安打、打率.492、本塁打9本。
今シーズンはまだレギュラーシーズンの半分を終えていない時点での数値ですから、今シーズンの成績は明らかに向上しています。また、ファーストストライクを積極的に振っていく姿勢も顕著。
小林氏は、今シーズンの大谷選手は2021年と2022年の特徴を合わせた打撃をしていると指摘。
「大谷選手は2021年に46本塁打を放って、長距離砲として覚醒しました。2022年は、本塁打数こそ前年ほどではありませんでしたが、三振をせずに率を上げていく打撃を志向。今季は、その2年間のいわばハイブリッドですね。本塁打数は両リーグ通じてトップですし、打率も3割近い。正直、言葉では表現できないほど無限の可能性がある選手」
まとめ
小林氏の分析によると大谷選手は未だに発展途上中の選手であるとのこと。このことはベースボールデータの分析能力を持たない一般の方々にも確信が持てることです。