2015年、アメリカ自由人権協会(ACLU)は中国が「社会信用システム」を構築していると発表しました。このシステムの実態について海外YouTubeチャンネル「PolyMatter」が解説しています。
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「社会信用システム」の役割とは?
「社会信用システム」といわれると、全ての人の行動を徹底的に監視してそうなイメージです。しかし、中国で運用されている社会信用システムは実際のところ、市民の行動を監視するだけのものではなく、市民にとって役に立つ部分もあったようです。
中国の社会信用システムは現在「3つの役割」を果たしています。
【1】財政対策
1980年に一人っ子政策が法制化される前に生まれた数百万人は働き盛りの年齢を超えています。これらの労働者が退職し始めると、中国の労働力はより高価になり、利益の減少につながります。
しかし、消費が拡大すれば中国の経済を立て直すことができます。ただ、以前の中国で銀行やクレジットカードなどの信用情報を持っているのは人口のわずか5分の1しかいませんでした。当然、銀行やクレジットカードがなければ、ローンを組むことができません。ローンが組めないなら、お金を使うこともできません。
一方、銀行口座を持たない人口の多くは、WeChatやAliPayといった中国のアプリを日常的に利用しています。そこで「すべてのデータを使って信用スコアを作る」というアイディアが考えられ、アリババグループのアント・フィナンシャルなどを含む8つの企業がシステムを構築しました。
【2】市民の評価
以前の中国では粉ミルクに有毒化学物質が使用されるという食品問題や、政治家や公務員の汚職が社会問題になっていました。これらの問題は、中国社会全体の信頼の欠如につながると政府は懸念しました。
そこで中国政府は、都市に市民の行動を評価するシステムを作るよう指示します。しかし、細かいルールは各都市にゆだねられていたため、それぞれ独自のルールと報酬で評価システムを導入することになりました。
例えば「タバコを5本吸うごとに3ポイント」「15,000歩歩くごとに5ポイント」加算すると発表した都市もあれば、「市民一人ひとりにAからDまでの成績をつける」という都市もありました。これらのルールは市民から非現実的だと非難されました。ただし、中国政府はこのような問題だらけのシステムを評価していないようです。
【3】進化した「ブラックリスト」
以前は、各省庁が個別に記録を管理していたため、例えば税務当局の規則に違反しても、食品検査官には知られずに済んでいました。つまり、ブラックリストが共有されていなかったということです。
現在では、各省庁がそのデータを内部だけでなく一般市民とも共有することになっており、企業名を検索して評判の良い企業かどうかを判断することができます。
このように中国の社会信用システムは市民だけを監視するのではなく「財政対策」「市民の評価」「データの共有」といった目的で運用されているのです。