認知症と「クモの糸」の意外な共通点を研究者が発見

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クモの糸の生成方法は長い間謎に包まれていましたが、最近の研究でその謎が解明されました。そして、研究を進めると「クモの糸」と人間の「認知症」に共通点があることが分かりました。その共通点について海外メディア「sciencealert」が解説しています。

*Category:サイエンス Science *Source:sciencealert,sciencedirect

クモの糸と認知症の共通点とは?


クモの糸はスピドロインというタンパク質でできていて、クモの腹部の絹糸腺に油滴のような液体として蓄えられています。ただ長年、クモがこの液体をどのように糸に変えるかは分かっていませんでした。

しかし研究者は、アルツハイマー病やパーキンソン病の研究から「液体」と「糸」がどのように関係しているのかの重要な手がかりを発見します。

これらの病気に関与する「タウ」や「α-シヌクレイン」と呼ばれるタンパク質は、人間の細胞内で油のような小さな液滴に集合することがあります。

タウは、脳の神経細胞(ニューロン)の内部骨格を安定させる働きを持つタンパク質です。この内部骨格はチューブのような形をしており、その中を栄養分やその他の必要な物質が移動して神経細胞のさまざまな部分に到達しています。アルツハイマー病では、異常な形のタウが蓄積され、正常なタウタンパク質とくっつき、「タウのもつれ」を生じさせます。

α-シヌクレインは、ドーパミンを生成する神経細胞に大量に存在し、このタンパク質の異常な形態はパーキンソン病と関連しています。

このどちらかのタンパク質が、皿の上で茹でたスパゲッティのように絡み合うと、人間の中で油滴が形成されます。最初、タンパク質は柔軟で弾力性がありますが、タンパク質同士が絡み合ったままだとタンパク質がくっつき、形状が変化して硬い繊維になります。この変化した繊維は、例えばアルツハイマー病などの神経変性疾患において、人間の細胞に対して毒性を発揮することがあります。


— 出典:sciencedirect

このような液体が硬い繊維に変化する過程は、クモがスピドロインを糸に変化させる過程に似ています。


そこで、研究者達は合成スピドロインを使ってクモの糸の生成方法を調べることにしました。そして研究の結果、クモの糸の特性があきらかになったのです。

合成スピドロインがクモの絹糸腺に含まれるリン酸緩衝液を溶かし液滴を形成することが確認できました。そして、通常ペアを形成するスピドロインタンパク質が、1つの分子に分裂することがわかりました。さらに、リン酸緩衝液を使ってタンパク質を液滴に絡め取ると瞬時に硬い繊維になり、液滴を作らずに酸を加えると繊維の形成に時間がかかることも発見しました。

この発見は繊維を形成する際に、スピドロイン分子がお互いを見つけなければならないことを示しています。言い換えれば、スパゲッティのようにスピドロインを絡ませることで、素早く糸を組み立てられるということです。

このようにクモが糸を紡ぐことと、人間にとって有毒な繊維には類似性があります。そのため、クモの糸の研究が進めばいつか神経変性疾患に対する新たな治療法を模索する手がかりが得られるかもしれません。

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