2021年、サルデーニャの水族館でイスペラという名のスムースハウンドシャークが誕生しました。しかしこの出産には驚くべき事実がありました。なんとイスペラの母親はこの10年間、メスとしか生活していなかったというのです。海外のYoutubeチャンネル「TED-Ed」が詳しく解説しています。
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動物の「単為生殖」は実は意外と多い
イスペラに父親がいなかった可能性は十分にあります。というのも全員メスのトカゲがいるように、生物学上の不思議な種が存在するからです。
通常、有性種は、生存可能な胚を作るために必要な染色体の数の半分を含む性細胞を持っています。つまり、卵細胞が2本の染色体を形成するには、精子細胞と受精する必要があります。しかし、性細胞を持つ種の中には、ギリシャ語で「処女の起源」を意味する「単為生殖」と呼ばれる無性生殖を行うものがあります。単為生殖では、未受精の卵細胞から胚が発生し、自身の染色体数を2倍に増やします。単為生殖しか行わない生物もいれば、有性生殖と単為生殖の両方を行う生物もいます。
実は、単為生殖は一般的なことなのです。コモドドラゴンやある種の七面鳥、ニシキヘビ、サメなど、80種以上の有性脊椎動物がこの方法で繁殖し、私たちを驚かせています。これらは通常、飼育下でメスが思いがけず出産したときに発見されます。イスパラの出産は、スムースハウンドシャークにおける最初の単為生殖の記録であったかもしれません。また、野生のヘビでも単為生殖が確認された例があります。しかし、どれだけの数の父親を持たない生物が存在しているかは不明で、集団全体の遺伝子解析がなければ追跡するのは難しいでしょう。
なぜこのような現象が起こるのでしょうか?科学者たちは、単為生殖が進化的に有益な場合もあると考えています。なぜなら、生殖行為は面倒なものだからです。時間とエネルギーを必要とし、捕食者に対して無防備になってしまい、致命的でさえあります。一方、単為生殖は片方の親だけでいいのです。
また、個体数を急激に増やすこともできます。エサが豊富な夏、エンドウアブラムシは単為生殖を行い、好条件下で個体数を爆発的に増やすことができます。アブラムシやキリギリス、トカゲ、ヤモリ、ヘビなどの中には、単為生殖しかしないものもいます。
では、なぜ他の動物はわざわざ生殖行為をするのでしょうか?科学者たちは、セックスはその欠点を長期的な利益で補っていると考えています。生殖行為によって遺伝子を混ぜ合わせると、遺伝的多様性を高めることができます。そうすれば、困難な状況になっても、集団全体を終わらせることなく、有益な変異を選択し、有害な変異を除去することができるのです。
一方、単為生殖集団では、個体は自分の遺伝子を用いてのみ繁殖します。マラーのラチェットと呼ばれる理論によると、それは良くありません。この理論は、単為生殖の系統は時間とともに有害な突然変異を蓄積し、やがて数千世代を経て、生殖や繁殖に支障をきたすというものです。この段階になると、個体は生殖不能に陥るので、絶滅に至ります。
自然界でこのようなプロセスが展開されるのを私たちはまだ見ていません。しかし、単為生殖のナナフシには、有性生殖のナナフシにはない有害な変異が蓄積されていることが確認されています。このことがナナフシの絶滅につながるかどうかは、時間がたたなければわかりません。
しかし、単為生殖を行う種の中には、突然変異の危機を回避する方法を持つものもあるようです。ニューメキシコのウィップテイル・トカゲは、2種類の異なるトカゲが交配して、メスだけの新種を作り出しました。このトカゲのゲノムは、親となる2つの種の異なる染色体セットの組み合わせで出来ています。このため、遺伝的多様性が高く、将来にわたって生存できる可能性があります。
一方、ブデロイドワムシは6000万年前から単為生殖を行っています。これは、外来遺伝子を取り込むことで実現した可能性があります。実際、ワムシの遺伝子の約10%は、菌類、細菌類、藻類など他の生物からのものなのです。どのようにしているのかは不明ですが、どうやらうまくいっているようです。生殖の謎を完全に解明するためには、さらなる研究が必要であり、イスペラのような例外の発見も必要になるでしょう。