イーロン・マスクの思想
マスク氏は南アフリカに生まれ、カナダ、アメリカへと渡り成功した起業家です。私生活では複数の女性と内縁関係にあると報じられるなど、いゆわる進歩的(Progressive)な姿勢であるようですが、近年の政治的スタンスは保守・共和党寄りです。なお、この場合の〝保守〟とはナショナリスト(国家主義者)というよりは、コミュニティや個人の〝自決(自ら決する権利)〟を重視するリバタリアン寄りにみえます。
自身が経営するテスラ社やスペースX社の本拠地を、米国では左派民主党の州であるカリフォルニアから、保守共和党の州であるテキサスに移したことからも、その思想が透けてみえます(あるいは、単純に税制の問題だ、とする意見もあります)。
〝左派の州に偏る〟AI企業
こうしたマスク氏の右派寄りの思想を踏まえた上で「TruthGPT」の立ち上げを観察すると、グーグルやOpenAI(ChatGPT開発会社)が極めて左派性の強い〝ブルーステート〟のカリフォルニア州、中でもリベラルなサンフランシスコに集中していることにマスク氏が懸念を抱くことは必然のように思えます。
下記のマップでは青が左派民主党の州、赤が右派共和党の州。
—出典:ウィキペディア)
ChatGPTは純粋にネット上のデータを学習するだけでなく、その後数ヶ月かけて人間に訓練を受けた上で世に出る仕組みです。そのため、AIを訓練する人間やガイドラインを制定する立場の人間の思想的な偏りから強く影響を受ける可能性があるのです。実際、OpenAI社による「AI訓練」の内容は「ブラックボックス」であり、社名に反してまったくオープンではありません。また、所在地の偏りが党派性の偏りになっている可能性は否定できません。
下記の画像はOpenAI社が採用を行なっている地域。勤務地は全てカリフォルニア州サンフランシスコとなっています。
完全な中立などあり得ない以上、こうした「左派的な州でつくられるAI」に対抗する意味でマスク氏は独自のAIをつくりだそうとしていると見るのは荒唐無稽なことではないでしょう。
えてして「万能の回答者」のようにもてはやされるAIですが、その裏側には人間がいること、そして政治や思想的な意味での偏りからは決して自由ではないという事実を利用者全員が忘れてはなりません。
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