アメリカでは年に40億件以上もの荷物の配達が行われます。この大量の荷物を運ぶ新しい配送法として、注目されているのが短距離都市型ドローンです。一般向けの運用は難しいように感じますが、本当に実現可能なのでしょうか?技術者兼YouTuberのマーク・ローバー氏が、これを実現しつつあるドローン配送システム「Zipline」について解説しています。
前編:死亡率88%削減、時速112kmで命を救う超高速ドローン輸送システム「Zipline」
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ドローン配送「Zipline」の問題点3つと解決策
ドローン配送が一般化するには、現段階で3つの問題点が考えられます。ローバー氏は、アメリカのドローン宅配便企業である「Zipline」を例に挙げ、同社がとった解決策を解説しています。
問題点1つ目は騒音です。一日中、空でドローンが大きな音を立てて飛び回っていては困ります。
Ziplineのドローンは22kgもあります。しかし一般的な約450gのドローンと比較してもZiplineのドローンは圧倒的に静かです。重量がある方が大きな音を出しそうですが意外にもそうではないのです。
人が耳障りだと思う音には理由があります。音声解析のグラフを見てみましょう。尖ったスパイクが密集しています。こうなると高周波となり耳障りに感じます。
しかしZiplineのローターはスパイクを取り除き、更に平らになるように設計されています。そうすることで一定の「ヒューヒュー」という音になり、ホワイトノイズのように脳が認識しなくなるのです。
2つめの問題点は安全性です。空からドローンが落ちてくることは避けたいところです。
Ziplineのドローンは後ろについている大きなプロペラが非常に巧妙に作られています。プロペラの1つが停止しても、後ろのプロペラが補い飛行を続けることができます。万が一、何か問題が起こり電源が切れてしまった場合でも、ドローンからパラシュートが出て落下を防ぎます。6年間の50万回の飛行で、人身事故を起こしたことは一度もありません。
最後の問題点は、どのように荷物を積んで発送させるのかということです。
例えば薬局で使う場面を想定しましょう。薬局の窓にドローン専用の入口をつけます。そこにドローンから切り離されたドロイドが専用のシュートを使って降りて来ます。その中に薬を入れドローンに戻します。
医師のオンライン診察を受診している患者が15分のビデオ通話を終えると、薬は裏口にあるかもしれません。
また、物流センターや大型小売店での利用も想定しています。Ziplineのドローンは、最大約1.6kgの荷物を運びながら、往復約8.6kmの距離を移動することができます。大きなトラックで輸送する必要がないため、箱詰めするための段ボールが不要になり、地球環境にも優しいのです。大型店舗に限ったことではなく、お気に入りの地元のお店やレストランが、より気軽に物を送ることができるようになります。
ドローン配送は便利なだけでなく、交通渋滞の緩和、環境負荷低減と様々なメリットが期待できます。配送ドローンに関してはAmazonも取り組んでいますが、「Zipline」がいち早く普及すれば、配送の速さや安さを売りにしてきたAmazonが崩れ去る、などというシナリオもありえるかもしれません。