2022年にリリースされたチャットAI「ChatGPT」は、Googleやマイクロソフトを始めとした多くの企業を動かし、AI開発競争を激化させました。これは中国企業も例外ではなく、テック大手は先週からChatGPTのような製品を開発していることを次々と明かしています。
これまでの中国テック企業であれば、一瞬で「ChatGPT」の模倣サービスをリリースしていたはずです。ところが今回の場合、「ChatGPT」のような万能なAIを模倣することは難しいと、海外メディア「CNBC」が報告しています。
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チャットAI開発が中国テック企業にとって難しい理由
「ChatGPT」は、米国のOpenAIが開発したチャットAIです。膨大なトピックに対する質問に、適切に回答できることが特徴で、料理のレシピなどはもちろん、プログラムのコードを書くことすら可能です。
中国の大手テック企業もこれに続こうとしていますが、ほとんどの企業に共通するのは、「ChatGPT」のような包括的なプラットフォームに取り組んでいるとは語っていない点です。アリババやNetEaseなどの企業は、アプリケーション固有のシナリオで、このAI技術について話しています。
アリババはクラウド部門を通じて、同社のクラウドコンピューティング製品に統合可能なChatGPTスタイルの技術開発に取り組んでいると発表しました。またNetEaseは、教育子会社のYoudaoが生成AIに取り組んでいると述べ、この技術が同社の教育製品の一部に統合される可能性があると付け加えています。
これらは、「万能なチャットAIではない」という中国政府に対するアピールです。中国当局はインターネットコンテンツを厳しく管理しており、一部の情報をブロックしたり、検閲したりしています。「ChatGPT」は中国では公式にブロックされていませんが、OpenAIは同国のユーザーのサインアップを許可していません。
チャットAIはコントロールが難しく、中国政府にとって不都合な質問に答えてしまう可能性もあります。先日には、チャットAIを搭載したマイクロソフトの「新しいBing」も、発表の翌日には「答えてはいけない」と設定されていた情報を漏らしてしまいました。
The entire prompt of Microsoft Bing Chat?! (Hi, Sydney.) pic.twitter.com/ZNywWV9MNB
— Kevin Liu (@kliu128) February 9, 2023
このように、中国にとっては何でも答えてしまう「ChatGPT」のようなAIが登場するのは、非常に厄介なのです。「King’s College London」の中国・東アジアビジネス上級講師であるシン・サン氏は、電子メールで「CNBC」に次のように語っています。
(ChatGPTへの)対応において、これらのハイテク大手はジレンマに直面している。一方で、政党国家に新たな政治的・安全保障上の懸念を生じさせるような新しい製品、サービス、ビジネスモデルを開発していると政府に認識されないよう、極めて慎重になる必要がある。
専門家のポール・トリオロ氏は「(中国の)さまざまな政府機関が過去1年間に技術プラットフォームとAIアルゴリズムの両方に規制の焦点を当てていたことを考えると、大手テック企業は、チャットボット/生成AIツールを出して注目を集め、自分たちを窮地に追い込みたいとは思っていない」と指摘しています。
なお、最も「ChatGPT」に近いといえるチャットAIを準備しているのが、中国検索大手「Baidu(百度)」です。米経済紙「Bloomberg」によれば、同社は「3月にChatGPTのようなサービスを公開する」としているとのこと。
しかし、中国はAIに関する規制を強めており、「ChatGPT」のようなサービスをリリースするには、中国サイバー空間管理局(CAC)の認可が必要になるだろうと「CNBC」は指摘しています。BaiduのAIも、これらの厳しいルールを課せられれば、出来ることもかなり制限されてしまうでしょう。これらの「中国ならではの縛り」によって、中国企業が「ChatGPT」ほど自由に様々なことができるAIを作るのは、かなり困難なこととなっているのです。