検索エンジンで世界最大のシェアを持つGoogleは、多くのユーザーの情報をコントロールできる立ち位置にいます。同社はフェイクニュースや情報操作を防ぎ、バランスのとれた検索結果と報道を提供するために多くの対策をとっているものの、それをすり抜けるものもあるのが現状です。
そこでGoogleが現在、ヨーロッパを中心に拡大している取り組みが「プレバンキング」キャンペーンです。
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動画広告を利用した対フェイクニュース計画
「プレバンキング」は直訳すると「事前暴露」という意味で、「接種理論」という社会心理学に基づいた技術の1つ。これはプラットフォーム側の抑制ではなく、ユーザー自身が情報操作されそうになっていることを認識し、拒否できるようにするものです。
プレバンキングは、フェイクニュースの典型的な手口を解説した短い動画で行われます。例えばこちらは、ポーランドで展開されたプレバンキングの動画。この動画ではポーランドで問題化している「住宅危機」がテーマとして取り上げられています。
動画では、フェイクニュースに騙された男性がカフェで「政府がポーランド人の住まいを取り上げ、難民に無料提供している」と語ります。それに対し、女性と別の男性が反論し「誰が書いたのかを確認したのか?」と問うといった構成です。
このキャンペーンを行っているのは、Googleの子会社であるJigsaw。同社はこのような動画を、ケンブリッジ大学とブリストル大学との共同研究で到達した知見に基づいて制作し、2022年からヨーロッパの一部地域で公開しています。
同社によれば、このプレバンキングはキャンペーン後の調査では、動画を見た人は情報操作やフェイクニュースを正しく認識する確率が最大で8%高いことが判明したとのこと。動画キャンペーンはYouTubeやFacebook、Twitter、TikTokで展開されています。
Googleはプレバンキングを、特定のフェイクニュースに対抗するだけでなく、一般ユーザーが自らフェイクニュースを識別し、情報操作に対してより強くなるための手法であると説明しています。
Jigsawは今後、同じSNSとYouTubeのプレロール広告戦略を用いて、同様のローカライズされたキャンペーンをドイツに拡大することを計画しています。このキャンペーンが成功すると証明されれば、今後さらに拡大されることとなりそうです。
Googleがこのようなキャンペーンを行っているのは、プラットフォーム側ですべて制御することには限界がきていることの証明ともいえるでしょう。コロナ渦や混乱する世界情勢、さらにはAIの登場によってフェイクが容易になった現在、ユーザー側のリテラシーが求められているのです。