アメリカ空軍が、AIを使ってF-16戦闘機を飛行中に自動制御することに成功しました。
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アメリカ空軍がAI制御のF16戦闘機の飛行テストに成功
F16を改造したこの戦闘機は、「VISTA X-62A(可変安定性飛行中シミュレーターテスト航空機)」と呼ばれています。発表によれば、この機体は今回、高度な戦闘機操縦や目視範囲を超えた交戦など、17時間にわたる飛行テストを完了したとのことです。
テックメディア「Ars Technica」によれば、「VISTA X-62A」は2022年12月前半にカリフォルニア州のエドワーズ空軍基地で、空軍研究所の自律空戦作戦(AACO)とDARPAの空戦進化(ACE)AIエージェントの12種類の飛行テストに投入されたとされています。
搭載されたAIは、DARPAのACEプログラムで開発されたもの。なお、先日行われたACEプログラムについての発表では、AIが戦闘機を制御している最中に、ヘッドマウントディスプレイを通してパイロットのリスク管理を助ける「Trust-O-meter」も発表されています。
今回AIが搭載された「VISTA X-62A」は、F-16Dとして誕生し、1992年に初飛行して以来、エドワーズ基地の空軍テストパイロット学校で活用されてきた機体です。2021年にはNF-16DからX-62Aへと再設計され、長年にわたる改造によって、他の固定翼機の飛行特性をシミュレートできるようになり、現在ではAIパイロットの訓練プラットフォームとして有効な機体となっています。
AACOの関係者は、AI駆動型自律エージェントを訓練した後、これらのエージェントを飛行させて、シミュレータから実飛行への違いを検証することが非常に重要です」と述べています。X-62のような機体は、こうした自律行動の迅速な飛行テストに不可欠なのだそうです。
DARPAのACEプログラムマネージャーであるライアン・ヘフロン空軍中佐は以下のように述べています。
私たちは複数の出撃(離陸と着陸)を行い、それぞれの出撃で多数のテストポイントを実行し、さまざまな出発条件、さまざまな模擬敵、模擬武器能力でアルゴリズムをテストしました。大きな問題はありませんでしたが、仮想から実戦に移行する際に予想される、シミュレーションベースの結果との差異が発生しました。これは、高度な自律能力を飛行試験で検証するだけでなく、VISTAのようなテストベッドで検証することの重要性を浮き彫りにするもので、他の飛行体よりもはるかに速い速度で教訓を学び、反復することができました。
アメリカ空軍がAI搭載戦闘機の開発を進める背景には、中国との開発競争があります。米経済誌「Forbes」によれば、中国のAIシステムは、人間のトップパイロットを模擬戦闘で打ち負かしたとのこと。
このAIと対戦したパイロットのファン・ギョウユ氏は、中国の国営新聞「グローバル・タイムズ」の記事で「最初は、AIに勝つのは難しくなかったが、演習が進むにつれ、AIは対戦のたびに学習し、着実に向上していった」と語っています。そして最後には、人間離れしたスピードと正確さで、ファン氏から学んだ戦術を使って彼を打ち負かしてきたそうです。
「Forbes」はAI搭載戦闘機のメリットとして「人間のパイロットに比べて大胆不敵で、非常にアグレッシブに動ける」「人間よりも速く反応し、複数の機体を全方位に追跡し、急速に変化する状況の中で最大の脅威と最適なターゲットを特定することができる」と指摘。自動運転に先駆け、戦闘機パイロットの座が人間からAIに変わる日は近いのかもしれません。