GAFAを始めとする多くのテック企業は最近、数万人に及ぶ大量解雇を行っています。しかし収益面を見ると、これらの企業の一部は過去最高収益を記録するなど、まだまだ倒産とはほど遠い状態です。
なぜこの状況でとつぜん、これらの企業は大量解雇を始めたのでしょうか。これについて、米テックメディア「The Verge」が解説しています。
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黒字の大手テック企業がなぜ「大量解雇」を決行したのか?
米国の大手テック企業が出した「大量解雇」の言い分をまとめると、そのほとんどは「コロナ渦で収益が増加して、人を雇いすぎた」というものです。
コロナ渦の開始とともに、世界は急速にオンライン化され、eコマースの急増により、収益が桁外れに増加した。多くの人が、これはパンデミック終了後も続く恒久的な加速度的成長であると予測しました。私もそう考え、投資額を大幅に増やす決断をしました。しかし、残念ながら、これは私の期待通りにはいきませんでした。
過去2年間、私たちは劇的な成長期を経験しました。その成長に見合うように、そしてその成長を促進するために、私たちは今日直面しているものとは異なる経済的現実を採用したのです。
今年の見直しは、不透明な経済状況や、ここ数年で急速に採用が進んだことを考慮すると、より困難なものとなりました…本日は、こうした見直しの結果、さらなる役割の廃止という難しい決断を下したことをお伝えしたいと思います。11月に行った削減と、今日お伝えする削減を合わせると、18,000人強の職務を廃止する予定です。
しかし「The Verge」は、これらの企業が「倒産寸前の状態ではなく、最近でも大きな収益をあげている」と指摘。この大量解雇の原因は業績ではないと分析しています。ではなぜ、黒字にも関わらず、大手テック企業は大量解雇を進めるのでしょうか?
MITスローン経営大学院のマイケル・クスマノ氏は、その答えとして「投資家が企業を評価する方法を変えた」ことを挙げています。一般的に、企業が急成長しているとき、たとえば売上高が年間20%や30%上昇しているときは、誰も利益など気にしない、とクズマノ氏はいいます。しかし、今は成長期ではないので、投資家がより慎重になっているのです。
技術系企業は、数百億ドル、場合によっては数千億ドルの蓄えを持っている。しかし、彼らはそれを経営に役立てようとはしない。投資家が決算書を読むとき、これらの埋蔵金について考えているわけでもない。技術系企業の投資価値を測る指標の1つは、従業員1人当たりの売上高だ。パンデミック時にスタッフを大量に雇用したため、従業員1人当たりの売上高は減少していることになる。
マイクロソフトのようなソフトウェア会社は「従業員一人当たりの売上が50万ドル、あるいは最低でも30万ドルであるべきだと考えられる」とクスマノ氏はいいます。同氏によれば、「それを下回り始めると、従業員数が多すぎるのではないかと心配になる」 のだそうです。
解雇される従業員側としては〝血も涙もない〟としかいいようのない話ですが、結局のところ大量解雇が企業のためになるかといえば、クスマノ氏は、これが「よく分からない」といいます。
大量解雇を推す投資家の考えは、退職金で何百万円、何十億円という初期支出があっても、従業員に支払う給料が減れば、継続的に会社の経費が減るというものです。しかし、このテーマについて詳しいスタンフォード大学ビジネススクールのジェフリー・フェッファー教授は「レイオフはコスト削減にはならないだろう」と断言しています。
多くの場合、企業はコストに問題を抱えているのではなく、収益に問題を抱えているのです。従業員を削減しても、収益が上がるわけではありません。むしろ減少させることになるでしょう。