レーザーを使い、稲妻を新しい軌道に誘導するという実験に、フランス国立先端技術学校(ENSTA Paris)の研究者が世界で初めて成功しました。この新たな研究成果は、危険な落雷からの保護強化につながる可能性がある、とテックメディア「MotherBoard」が報告しています。
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落雷から半径800m超を守るレーザー避雷針
レーザーで落雷を迂回させるというアイデアは何十年も前からありましたが、スイスのゼンティス山で行われた今回の実験は、現場で実証できた初めての例となっています。
落雷に遭う確率は非常に低いものの、人に直撃した場合のダメージは深刻なものです。同研究では、雷による死亡者数は4,000人以上、被害額は毎年数十億ドルに上るとされています。
金属製の避雷針の登場により、多くの地域で雷による被害が軽減されましたが、避雷針の保護範囲は近辺に限られます。レーザー光を避雷針にできれば、理論上はより広い範囲を仮想的に遮蔽することが可能となりますが、これまでその試みは実証されていませんでした。
実験を行ったのは、フランス国立先端技術学校のオーレリアン・ホアード氏ら研究者チームです。同氏らは、ゼンティス山の通信塔の近くにレーザーを設置し、この実験を成功させました。ゼンティス山の通信等は年間100回以上落雷すると言われており、世界で最も雷が落ちる場所だといわれています。
設置された装置は、雷雨の際にレーザーパルスを上空に照射し、空気中の粒子や分子をプラズマ構造へと変化させるものです。研究チームは、標高2502mのゼンティス山の上空からレーザーパルスを照射し、地面から打ち上げる「上向き」雷放電を4回誘導することに成功したとのこと。
さらに、晴天の時に発生したそのうちの1つを高速度カメラで撮影することに成功。画像では、レーザーが落雷を50メートル以上誘導していることが確認できたそうです。
この結果は、レーザーを使った避雷針が半径804メートル、標高数百メートルのインフラを保護できる可能性を示しています。同氏らは国際学術誌「Nature Photonics」で、この研究について「空港、発射台、大規模インフラストラクチャ向けのレーザーベースの雷防護の開発における重要な前進」だと述べました。
また、この研究は「レーザー誘起フィラメントが、短くて強いレーザーパルスによって上空に形成され、雷放電をかなりの距離まで誘導できること」を初めて実証したとのこと。研究チームは、今後の実験でこの有望な技術を微調整し、重要なインフラに導入できるようにしたいと述べています。