10年近く前から噂されてきたApple Carですが、いまだに開発に大きな進展は見えません。そんな中で、苦戦するAppleを尻目に、EV開発を急速に進めはじめたのがソニーです。
ソニーは昨年ホンダとの合同会社ソニー・ホンダモビリティを設立し、CESではEVのプロトタイプも公開しました。なぜソニーとホンダが強固な協力関係を結べたのか、その理由について米大手テックメディア「The Verge」が解説しています。
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ソニー・ホンダはなぜ「EV開発」で手を組んだのか?
ソニー・ホンダモビリティはCES 2023にて、新型EV「AFEELA」を発表しました。このEVの予約販売を2025年前半に開始され、2026年から生産開始となる予定です。
◆ 関連:ソニー・ホンダモビリティが新型EVをCES2023で発表! 実車を現地で撮影してきました!!今回お披露目された最新のプロトタイプはセダン型のEVで、幅いっぱいに広がる画面を搭載したダッシュボード、半自律運転支援のための45個のセンサーとカメラを搭載。全輪駆動で、センサーとARを活用したナビゲーションにも対応する予定です。あくまでプロトタイプではあるものの、その中身はすでに高級EVと張り合えるようなものです。
自動車調査会社JDパワー社のデータ・分析担当副社長であるタイソン・ジョミニ氏は「それぞれの分野で最も有名で最も優れた日本企業2社が一緒になった」と延べ、家電メーカーと自動車メーカーの強力によって「マジックが起きる」と期待されていると指摘しています。
(ホンダは)ものづくりに優れていることで知られています。(ソニーは)素晴らしいパートナーを見つけた。間違いなく、優良な自動車会社の中でも最も優良なパートナーです。
ソニーにとってホンダは、実績のあるパートナーであるだけでなく、米国に大規模な製造拠点を持つ企業でもあります。ホンダの自動車製造インフラは現在、米国で販売されるホンダとアキュラスのほぼすべてが米国で製造されているほど強固です。これによりソニーは、自動車とそのバッテリーを北米で製造した場合、最大限のEV税制優遇措置を認めるインフレ抑制法を活用することができます。実際、ホンダは現在、オハイオ州で約5,700億円のバッテリー工場の建設に取り組んでいます。
ホンダにとってもソニーと組むことには大きなメリットがあります。ホンダ、トヨタ、マツダ、日産などのブランドは、EVではアメリカ、ヨーロッパ、韓国の競合他社に大きく遅れをとっているのが現状です。ホンダは来年、初の本格的なEVである「プロローグ」を発売する予定ですが、それさえも自社ハードウェアではなく、ゼネラルモーターズのウルティウムEVプラットフォームを使っています。
同社にとって、「AFEELA」はこれに追いつくためのチャンスです。米カーメディア「Automotive News」によると、このソニー・ホンダの車は、e.アーキテクチャと呼ばれるホンダの新しい電気自動車用プラットフォームを使用するとのこと。「AFEELA」が発売される頃には、ホンダも同プラットホームを利用して、自社ブランドで同様のEVをデビューさせる予定だそうです。
また、「The Verge」によれば、ソニー・ホンダモビリティCOOの川西泉氏は「ソニーは自動車メーカー向けのクラウドプラットフォーム作りにも乗り出す」と述べたとのこと。昨年、同社はユーザー設定をクラウドに保存する機能や、自律走行アプリケーションのための遠隔運転技術、クラウドゲームの遠隔再生機能などを発表していました。
Appleも以前、このような他社との協業を実現しようとしており、2021年初頭には「Appleが複数の日本の自動車会社と生産・供給契約について協議している」という噂もありました。しかしそれ以降の進展についての話はなく、2022年末にはApple Carプロジェクトを縮小し、もはや「完全な自動運転車をリリースする計画はなくなった」と経済紙「BloomBerg」に報じられています。
しかしソニーは車の「生産元」を求めるAppleとは違い、自社ブランドと、協力者であるホンダにもメリットがある形でこの計画を進めています。このような強固な協力関係を築けたことにより、ソニーは10年前から動いてきたApple Carの計画に先んじて「AFEELA」を公開し、一歩リードすることができたのです。
「AFEELA」の存在は、EVで遅れをとる日本自動車産業にとっては希望の星です。ただし、ジョミニ氏は、AFEELAの成功は「保証されているわけではない」と指摘しています。今回のCESでお披露目されたとはいえ、自動車ビジネスにおいて3年は長い期間であり、正式リリースまでに業界がどのようになっているかは分かりません。