人類はまだ、地球外生命体、つまりは宇宙人に公に出会ったことはありません。しかし、広い宇宙のどこかにはいるであろう宇宙人が、なぜ文明が発達した地球を訪れないのでしょうか?この理由について、新たな説が登場しています。
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地球外生命体が地球に訪れない「新たな説」とは?
物理学者のエンリコ・フェルミは、地球のような惑星が銀河の中で形成されている確率を考えると、地球外生命体は宇宙に広く存在しており、そのうちの数種は地球に到達しているべきだと考えました。しかし、人類と地球外生命体の接触の証拠は皆無です。この地球外生命体がいる可能性の高さと、実際に出会えていない矛盾を「フェルミのパラドックス」といいます。
この「フェルミのパラドックス」は長い間議論されてきたテーマです。例えば1975年、アメリカの宇宙物理学者であるマイケル・ハート氏は「高度な技術を持った星が、近くにある100個の星に宇宙船を送り込んだとします。そして、宇宙線を送り込んだ星から、また同じように新たな100個の星に宇宙船を送る」ということを考えました。そして、これを繰り返すと銀河系の大部分は65万年以内に横断できるとのことです。
しかし、現時点で地球外生命体は人類を見つけることができていません。そこから、ハート氏が導き出した結論は「地球外生命体自体が存在しない」あるいは「我々の子孫の時代に訪れる」でした。
しかしフェルミのパラドックスには落とし穴もあります。それは、根本に「他の星は宇宙文明にとって一様に魅力的で、文明が広げようとしている」という考え方がある点です。
この落とし穴をついた論文を出したのが、ブルーマーブル宇宙科学研究所の上級研究員ジェイコブ・ハック・ミスラ氏と、アメリカン大学で物理学の研究助教授を務めるトーマス・J・フォーチェス氏。彼らの新しい説では「拡大する文明は、銀河系での寿命を最大にするために、より魅力的な星を意図的に目指す」と考えられています。
この説では、宇宙人(つまりは生命体)にとって魅力的なのは、質量が軽く寿命が長い「K型主系列星」や「M型主系列星」だと考えられています。しかし太陽はより寿命の短い「G型主系列星」です。
たとえ超高度な文明であっても、他の太陽系を植民地化するには多くの資源が必要です。その資源を、長くは続かないかもしれない星系に費やす必要があるでしょうか?つまり、この新しい説では「地球外生命体は存在するけれども、太陽系に価値が無いから、地球には訪れない」という可能性を指摘しているのです。
この新しい説では、銀河文明が銀河系を植民地化するのに必要な時間を、K矮星とM矮星のみを対象とした場合の新しい推定値も計算されています。その結果、銀河文明が低質量星に到達するのには20億年かかることが判明したとのこと。
また、宇宙人が植民地を拡大する動機については、人口増加やエネルギー需要、科学的好奇心、支配欲などを挙げつつも、「(この考え方が)一般的な技術文明で当たり前なのか、望ましいのか、それ以上のことは分かっていない」と指摘。結局のところ、宇宙人が「地球を探さない理由」はいくつもあるのです。
忘れがちですが、人類が農耕文明を築き始めてからわずか1万年、宇宙への第一歩を踏み出したのはほんの数十年前の出来事です。そのため、宇宙にはどのような文明があり、どのような地球外生命体がいるのかを我々に知る術はありません。結局のところ、宇宙人にとって太陽系に価値がないのであれば、私たちが「太陽系の外を探索できる技術力」を開発するまで持つしかありません。