高度4,500メートルからパラシュートなしで奇跡的に生還したクリフ・ジャドキンス氏の体験談が、ウェブサイト「USS Los Angeles CA-135」にて公開されています。
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死を覚悟してパラシュート無しで落下した一部始終
ジャドキンス氏は、太平洋上空6,000メートルをF-8という飛行機でカリフォルニアからハワイまで飛行していました。しかし、F-8はこの距離を飛ぶのに十分な燃料を保持できないため、空中で燃料補給する必要があり、これは日常的な作業でした。
F-8は、速度の遅いタンカーにスピードを合わせ、燃料導管に接続し、いつも通り給油を始めました。給油が開始されると、燃料計が動き出し全てが順調に見えます。
タンカーの隊長からは「強制切断地点まで11分」とアナウンスがありました。この時点では燃料計等に異常はありませんでした。ジャドキンス氏は「数時間後には、ハワイのオアフ島のカネオヘ・オフィサーズのクラブで夕食をとっていることでしょう。そして、少し休んだらミッドウェイのウェーク島を経由して日本の厚木まで9,600㎞の旅を続けているはず」と今後の予定を考えながら給油が終わるのを待っていました。
「強制切断地点まで9分」の時点で燃料計は、ほぼ満タンであることを示していました。するといきなり「ドーン」という爆発音が聞こえました。ジャドキンス氏は、すぐにタンカーから切り離し、機体を浅く潜らせて、エンジンを再始動させるための飛行速度を稼ぎました。しかし、エンジンを再始動することはできませんでした。そして火災警告灯が点滅します。これは良い予兆ではありません。
同時に、イヤホンから「機体が燃えている。今すぐ機体を捨てて脱出しろ」という声が飛び込んできました。そこで初めて、ジャドキンス氏は燃料が漏れ出し、機体が発火していることを知ります。ジャドキンス氏は急いで、射出座席を発射して飛行機を放棄しようとしますが、脱出の操作をしても機体は何も反応しません。
この時、機体は60度の急降下をしていました。ジャドキンス氏はこのままでは機体の中で死んでしまうと考え、自力で飛行機から脱出しようと試みます。しかし、自力で飛行機から脱出することは簡単ではありません。なぜなら、脱出後に巨大な尾翼が体にぶつかり、飛行機が落ちる前に死んでしまう可能性が高かったからです。
ただ、機体に残っていても結果は一緒になります。そこで、ジャドキンス氏は操縦桿を握り、脱出時に尾翼が体に当たりにくくするために機体を水平にしました。そして、コックピット上部を覆う大きな窓を開け、シートに立ち上がり、両腕で顔を守り飛行機から飛び出ました。すると、奇跡的に尾翼とぶつかることなく飛行機から脱出できたのです。
あとは、パラシュートを開くだけです。ジャドキンス氏は手動でパラシュートを開きましたが、落下速度は落ちませんでした。不思議に思ったジャドキンス氏が見上げると、なんと小型パラシュートだけが開いていたのです。小型パラシュートは、メインパラシュートが開くまでパイロットがバランスを崩さないように補助するためのものです。
恐ろしいことにメインパラシュートは絡まって開いていなかったのです。ジャドキンス氏は、必死に揺すってメインパラシュートを膨らませようとしましたが、上手くいきません。
ジャドキンス氏が海面を見ると、石を投げ込んだように白い泡が立っていました。その泡は飛行機が墜落した場所だとすぐにわかりました。ジャドキンス氏は自身もすぐに飛行機のように海に叩き付けられると覚悟をしたことでしょう。