米国の多くの製品は中国で製造されていますが、それはiPhoneも例外ではありません。なぜ、Appleは中国に依存しているのでしょうか?また、中国に依存し続けるリスクはないのでしょうか?これらの疑問について、Appleに詳しいYouTubeチャンネル「Apple Explained」が解説しています。
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iPhoneが中国で製造され続けている理由とは?
iPhoneのディスプレイに使われている「Corning Gorillaガラス」などは、米国企業から調達しています。米国企業から調達をしているのであれば、米国で組み立てた方が効率的なはずです。しかし、iPhoneは中国で製造されています。
Appleが中国に依存し始めたのは、iPodを開発し出した頃です。Appleは、カリフォルニアにある既存の工場では製造に対応できないと考えていました。なぜなら、iPodはMacよりもずっと売れ筋の製品になり、毎年製品をアップデートしたいと考えていたからです。
米国の工場は、アジアの工場に比べると、スピードが遅く、機敏さに欠けるという弱点があります。また、米国で製造すると価格も高くなってしまいます。そこで、当時ワールドワイドオペレーション担当上級副社長であったティム・クックは、製造をアメリカから台湾や中国にシフトする計画を立てました。
このクックの計画は、すぐに功を奏します。その結果、AppleはiPodを1機種だけではなく、2機種も追加で発売できました。さらに、その3機種すべてに毎年アップデートが行われるようになりました。
iPhoneが開発されたとき、Appleは中国が組み立てに最適な場所であると確信する出来事がありました。スティーブ・ジョブズが、発売数週間前にiPhoneのフロントパネルをプラスチックからガラスに変更することを決定した時、中国では8,000人の工場従業員が12時間交代で24時間働き、すべてのiPhoneの前面プレートをガラスに変えたのです。
もし、米国の工場で同じことをしたら、数カ月はかかる作業です。このように中国での製造には、コスト、スピード、スケールの面で大きなメリットがあるのです。
しかし最近、重大なリスクとして健在し始めたのが「地政学的リスク」と「一国に頼ることによる不安定さ」です。米国と中国の関係は良いとは言えず、中国への依存は有事における大きなリスクとなりえます。
また最近では、iPhone組み立て工場のロックダウンによる混乱で、従業員の抗議デモが発生。これにより、2022年第4四半期のiPhone 14 ProおよびiPhone 14 Pro Maxの出荷台数は予測よりも「著しく低く」なっているとのことです。
著名アナリストのミンチー・クオ氏は、抗議行動により2022年第4四半期のiPhone出荷台数は、予測の8000〜8500万台に対し、20%減の7000〜7500万台となる見解を示しています。実際にiPhone 14 Proには最大5〜6週間の遅れが発生しており、重要な年末商戦に商品がないという悲惨な事態に陥っています。
Appleは近年、インド、タイ、マレーシア、ベトナムに製造を拡大しはじめました。しかし、Appleが中国で築きあげたiPhoneのサプライチェーンは巨大であり、他国へ安定して分散させるにはまだまだ長い時間がかかるでしょう。