古代イスラエルの象牙の櫛に掘られた碑文が解読され、「シラミ根絶」の呪文であったことが明らかになりました。この発見について専門家は、「人類の文字能力の歴史において画期的な発見」だとしています。
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象牙の櫛に掘られた「シラミ根絶」の呪文が意味するもの
数年前、イスラエルのテル・ラキシュ遺跡で小さな象牙の櫛が発掘されました。エルサレム考古学ジャーナルに発表された新しい論文によれば、この碑文はシラミの侵入を防ぐための呪文だったとのこと。
「これはイスラエルで初めて発見されたカナン語の文章です」と、共著者のエルサレム・ヘブライ大学の考古学者ヨセフ・ガーフィンケル氏は語っています。同氏によれば、これは約3700年前にアルファベットが日常的に使われていたことを示す直接的な証拠であり、人類の文字能力の歴史において画期的な発見だそうです。
これまでの研究では、本格的なアルファベットは紀元前1800年頃に出現したとされてきました。しかし、この最初のアルファベットについては、紀元前13世紀以前の碑文がほとんど残っておらず、ほんの数文字、あるいは1、2語しかなく、しかも文脈が不明だったとのこと。
「ほとんどの文字は、時間の経過とともに腐食してしまう材料に書かれた可能性が非常に高いのです」とガーフィンケル氏は述べています。1930年代以降、ラキシュ遺跡からは、紀元前13世紀から12世紀にかけての碑文の断片が10数点見つかっており、この都市国家と周辺地域がアルファベットの初期の歴史に重要な役割を果たしたと考えられてきました。
象牙の櫛は2016年に、ラキシュ遺跡のペルシャ時代の太陽神社、鉄器時代の宮殿砦、青銅器後期のアクロポリス神殿、青銅器中期の宮殿に近い、遺跡の最も高い中央部で発見されたとのこと。
櫛の大きさは3.5×2.5cmで、ほとんどの歯は折れています。片側には結び目をほどくのに適した太い歯があり、もう片側にはひげや髪についたシラミやその卵を取り除くのに使われたと思われる細い歯が14本あったようです。加えて櫛の中心部には顕著な浸食が見られ、これは使用中に誰かが櫛を指で押さえたためと考えられています。
分析では、この櫛が象牙でできていること、そして輸入品であることも判明しました。研究チームは、この櫛からサンプルをオックスフォード大学の放射光研究所に送ったものの、炭素の保存状態が悪く、正確な年代測定はできなかったそうです。
この櫛に掘られた碑文は17文字からなり(2文字は破損)、合わせて7語の完全な文章を形成しています。文字の並びや大きさは均一ではないものの、文字の大きさを考えると、彫り師の腕は相当なものだったようです。
この碑文を翻訳すると「この牙が髪と髭のシラミを根絶するように」となります。これは、この地域で初めて、遺物の銘文がその遺物の実際の用途に言及していることを示す発見です。櫛を顕微鏡で調べたところ、2番目の歯にまだ幼虫の段階であるシラミの残骸も見つかり、櫛が目的どおりに使われていたことも確認されました。
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