ニュージーランドには「シュレーターペンギン」が生息しています。このペンギンは3世代にわたり急速に個体数が減少している点、繁殖地がアンティポデス諸島とバウンティ諸島に限られている点から絶滅危惧種に分類されています。
そんな希少なシュレーターペンギンですが、卵を産んだ際に奇妙な行動を取ることが研究で明らかになっています。これについて、海外メディア「newscientist」が解説しています。
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ニュージーランドにあるオタゴ大学のロイド・デイヴィス教授は1998年、同僚2名とともにニュージーランドの南東860㎞に位置する島「アンティポデス諸島」で6週間ペンギンの研究を行いました。
ディヴィス教授は「このペンギンは都市から遠く離れているため、世界で最も研究されていない」と説明しています。この島は周囲に巨大な崖があり、ボートの発着場がありません。そのため、彼らはすべての道具を持って波間に飛び込み、約60mの高さの崖を登ったそうです。
研究チームは観察の過程で、メスのシュレーターペンギンが、5日ほど間隔をあけて卵を2つ産むことを発見しました。ところが、ここで教授は奇妙なことに気づきます。約45%のペンギンが最初の卵を孵化させず、産んだ後に卵を眺めているだけだったのです。
他のペンギンの場合、石や棒や草で巣を作るため、シュレーターペンギンの行動は奇妙です。しかし後日産まれた2つ目の卵はメスによって暖められ、無事に孵化しました。
デイヴィス教授は「本当に奇妙な行動です。まるで1つ目の卵をまったく気にしていないようです」と語ります。
彼と彼の同僚たちは、これまで詳細な研究がなされてこなかったこのペンギンの不思議な行動を理解するために、データを分析しました。
他の生物学者は、シュレーターペンギンが2つの卵を産むのは、おそらく雄同士の争いによって1つが壊れてしまったときの保険としてではないかと推測していました。しかしデイヴィス教授らは、シュレーターペンギンがめったに喧嘩をしないことを確認しています。
しかも、1つ目に産まれた卵の80%は、2つ目の卵を産む前か直後に、転がり落とされたり、故意につつかれたり、割られたりしていたのです。このことから、2個の卵が保険的な機能を果たしていないとわかります。
デイヴィス教授らはこれについて「遠隔地にいる餌を探すために長い距離を泳がなければならず、2羽分の十分な食料を持ち帰ることができないのではないか」と考えました。
つまり、シュレーターペンギンは祖先から2個の卵を産む遺伝子を受け継いだものの、新天地では2つの卵を育てることは難しかったのです。また、シュレーターペンギンが産む2個目の卵は、最初の卵よりも平均85%程大きいことがわかっています。
産んだ卵を捨ててしまうというのは冷酷な行動にも見えますが、大きくて健康な卵を付加させ、しっかり育てるという目的を果たすという意味では、シュレーターペンギンにとって合理的な選択なのかもしれません。
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