17歳の青年が、革新的な電気自動車(EV)のモーターを開発し、世間を驚かせました。彼が発明したモーターの凄さについて、海外メディア「the74」が解説しています。
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現在のEVのモーターは、再生不可能なレアアースを使用しており、採掘や精錬の過程で環境を汚染しています。また、レアアースは1㎏あたり数百ドルと高価です。これは、環境保全を重視する点でも、価格を安くするという点でもEV業界にとって大きな課題となっています。
この問題を解決するかもしれないと期待されているのが、フロリダ州フォートピアース・セントラル高校3年生のロバート・サンソンさん(17歳)が開発したモーター。彼は「時速100㎞以上で走るゴーカート」を自作するなど、才能溢れた青年です。
サンソンさんが参考にしたのが、シンクロナスリラクタンスモーターという、電力を機械的動力に変換する電気回転機械です。この種のモーターは現在、ポンプやファンなどに使われていますが、電気自動車に使うには力不足です。そこでサンソンさんは、このモーターの性能を向上させる方法を考えました。
シンクロナスリラクタンスモーターは、磁石を使用しません。その代わりに、空隙を設けたスチール製ローターが回転磁界に沿うように配置されています。このとき重要なのが、リラクタンス(物質の持つ磁気的性質)です。
ローターが回転すると、トルク(回転力)が発生します。この際、鉄と非磁性体であるエアギャップとの磁性の差である「有感率」が大きいほど、トルクは大きくなります。そして、サンソンさんは、エアギャップを使う代わりに、別の磁場をモーターに組み込めばいいと考えました。そうすれば比率が高まり、結果的により大きなトルクを発生させることができるのです。
「最初のアイデアが浮かんだら、その設計が実際に機能するかどうかを確認するために、テストを行う必要がありました」とサンソンさんは語ります。
実際、彼は何度もテストを行っています。そして、モーターが故障するたびに、何が問題だったのかを調べ、トラブルシューティングしました。最終的に、15個目のモーターでプロトタイプを動作させることに成功しています。
プロトタイプは、3Dプリントされたプラスチック、銅線、スチール製ローターで作られています。サンソンさんは、効率のテストをするために従来のシンクロナスリラクタンスモーターとして動作するように再設定しました。その結果、300回転/分でトルクが39%、効率が31%向上し、750回転/分では、37%の効率アップを実現したのです。
ただ、さらに回転させるとプラスチック製の試作品は溶けてしまったとのこと。しかし、トルクと効率の向上が、彼のデザインによる磁気顕著性の向上と相関していることが確認されました。
ちなみに彼の製品には、他にも部品がありますが、将来的に特許を取りたいと考えているため、これ以上詳細は明かせないそうです。この研究成果で、サンソンさんは、2022年のリジェネロン国際科学技術フェアで最優秀賞と75,000ドル(約1,100万円)の賞金を獲得しました。彼は、この賞金を学士号取得のための費用に充てると話しています。
サンソンさんは現在、16個目の試作品に取り組んでいます。今回はより頑丈な材料で作り、より高い回転数でテストできるようにする予定です。このまま高速で高効率のモーターができれば、特許取得に踏み切るそうです。
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