初期に比べて大きな信頼を得た「ISRO」が、今まで実行してきたミッションと、これから何を目指すのかについて解説します。
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ISROの注目すべきミッションとは?
まずは、太陽同期軌道を周回する衛星群「IRSシリーズ」です。これらの衛星によって、インドは淡水などの天然資源をマッピングし、監視することができるようになりました。
ISROには「INSATシリーズ」という、もう1つの衛星グループがあります。この衛星は静止トランスファ軌道に位置し、電気通信と放送の機能を提供しています。INSATはアジア太平洋地域で最大の国内通信システムなのです。
またISROは、Gagan衛星ナビゲーションシステムとIRNSSの衛星を持っています。これらのグループは、ISROとインドに、航法、通信、監視、その他多くのサービスを提供しています。
ISROの衛星は素晴らしいものですが、特に興味深いのは月や火星へのミッションです。中国が人類を宇宙へ送り出すことに成功した後、インドは人類を月に送り出すことに力を入れ始めました。
その第一歩として、ISROは月に探査機を送ります。
2008年、ISROはPSLVを改良した「チャンドラヤーン1号」を月に向けて打ち上げました。そして、この探査機が月に水が存在することを証明する最初の探査機となりました。
チャンドラヤーン1号の調査の結果、月の極には6,000億㎏以上の氷が存在することがわかりました。
ISROは、しばらくの間、月のミッションを停止します。そして、次の試みは、チャンドラヤーン1号よりも大規模なステップアップとなります。
2019年にGSLVマーク3を改良して打ち上げられた「チャンドラヤーン2号」には、インドが独自に開発した月周回衛星、着陸機、ローバーを搭載しています。このミッションの目的は、ISROが月面に軟着陸できる技術を持っていることを証明することでした。しかし、ソフトウェアの不具合により、着陸機は計画した経路から外れて月面に衝突してしまったのです。
ISROは、2022年に予定されている「チャンドラヤーン3号」で再び軟着陸に挑戦する計画です。
続いて、注目するべきミッションは、火星探査機「マンガローン1号」です。2013年11月、ISROはマンガローン1号を火星に向けて打ち上げ、2014年9月に火星周回軌道に乗せることに成功しました。これにより、インドは初の試みで火星周回軌道に乗せた最初の国となりました。
さらにこのミッションの素晴らしいところは7,400万ドル(約98億円)という記録的な低コストでミッション全体を完了させたことです。
NASAの火星周回ミッションは通常、数億ドルの費用がかかります。例えば、「マーズ・オデッセイ」は2億9700万ドル(約400億円)、「MAVEN」は6億7100万ドル(約890億円)、「マーズ・リコネッサンス・オービター」は7億2000万ドル(約960億円)もかかっています。
つまり、マンガローン1号は、マーズ・リコネッサンス・オービターのほぼ1/10のコストしかかかっていないということです。
ISROが宇宙ミッションのコスト削減に関して大きな前進を遂げたことは明らかですが、彼らはまだ始まったばかりです。
ISROは、2022年に「Aditya L1」を太陽に向けて、2023年に「Shukrayaan 1」を金星に向けて、2024年に「Mangalyaan 2」を火星に向けて打ち上げる計画を立てています。また、木星へのミッションも計画されていますが、その詳細はまだ分かっていません。
ISROの予算は年々増え続けており、将来は明るいはずです。ISROの予算は過去10年間で3倍になりました。これは、50年前に予算がピークに達したNASAとは対照的です。結局のところ、ISROは世界で最も進んだ宇宙機関の1つなのです。
費用対効果という点ではSpaceXには及びませんが、他の政府出資の宇宙開発プログラムと比べれば、はるかに優れています。そう考えると、ISROが人類を軌道に乗せ、最終的に月や火星に到達させるのは時間の問題でしょう。