Appleは「iPhone 14」シリーズに初めて衛星通信機能を搭載しましたが、そのほぼ直前にイーロン・マスクがCEOを務めるSpaceXも、T-Mobileのパートナーシップによってスマートフォンでの衛星通信を可能にすることを発表しました。
この2つの衛星通信の違いを、テック系メディア「9to5Mac」が解説しています。
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AppleとSpaceX&T-Mobileの衛星通信の違い
衛星通信の技術は急成長していますが、それでも容易なものではありません。Starlinkのような衛星インターネットサービスは、地上との安定した通信を実現するため、衛星の大型アンテナと大型の端末を必要としています。
SpaceXとAppleは、衛星通信を提供する上で、全く異なるアプローチをとっています。SpaceXとT-Mobileの共同サービスでは、宇宙にある何百もの巨大なアンテナを利用し、通常の5Gモデムだけで標準的な携帯電話から信号を送受信することになります。そのため、宇宙にはより高度なインフラが必要ですが、既存の携帯電話を利用できるというのが大きな利点です。
SpaceXはこの衛星通信に、同社の第2世代Starlink衛星を利用する予定です。これらの衛星はより大きいため、同社の主力ロケットであるFalcon 9には搭載できず、より大きなV2ロケットを打ち上げる必要があります。
対してAppleはGlobalstarと提携しています。Globalstarは軌道上に既存の24個の衛星を持っており、ユーザーは「iPhone 14」の新しい指向性アンテナで接続することができます。このため、ユーザーは接続するために衛星の方向に携帯電話を向ける必要があるのが特徴です。
SpaceXとAppleはともに、携帯電波が繋がらないような地域でも緊急連絡方法として使えるサービスだと宣伝していますが、SpaceXのサービスは、より一般的な用途で役立つものになるはずです。利用可能になれば、SpaceXは衛星接続で標準的なテキスト・メッセージを送れるようにする予定とのこと。さらにいずれは、電話もできるように拡張したいとしています。
一方Appleは、完全に緊急用としてiPhoneに衛星通信機能を搭載しました。この機能では、電波がつながらずに緊急サービスへの呼び出しが失敗した後、初めて衛星を介して緊急テキストを送信するオプションが表示されます。さらにいくつかの簡単な質問に答えて状況を説明すると、そのメッセージとメディカルID、緊急連絡先、位置情報、携帯電話のバッテリー残量が現地の緊急通報センターに共有されます。またAppleは、衛星接続を介して「Find My」の位置情報を更新することにも対応する予定です。
衛星経由の緊急SOSは、2022年11月に「iPhone 14」のiOS 16のアップデートで利用できるようになる予定です。それに対し、イーロン・マスクは発表イベントで、最短で 「2023年後半」にサービスを開始すると発言しており、実際に使えるようになるまではまだまだ時間がかかるはずです。
SpaceXとAppleの関係を「競合」として比較することは難しいですが、 SpaceXの衛星通信は実現まで時間がかかるため、今のところはiPhone 14の衛星通信が現実的で実用的だといえるでしょう。SpaceXの衛星通信とAppleの緊急SOS機能は両方使うことも可能なため、今後しばらくはお互いの存在が邪魔になることはないはずです。
SpaceXのCEOであるイーロン・マスク氏はTwitterで、Appleとの「有望な会話」を予告していましたが、Appleとの間のパートナーシップが結ばれたのかはまだ不明なままです。SpaceXの衛星通信は、実現すればAppleのものよりも魅力的ですが、時間がかかることには間違いなく、今後しばらくは両方とも様子見が続くでしょう。
衛星通信はApple、SpaceXともに最初は米国とその他の一部地域内に限定されていますが、両者とも今後さらにカバーエリアを広げることを狙っています。少なくともAppleの衛星通信機能は、そう遠くない未来に日本でも使えるようになることが期待できるはずです。