現代の物理学では、非常に多くの物質の動きを計算式として表すことができます。しかし、それはあくまで1つの法則であり、それぞれの背後にはまだ明らかになっていない法則があるのかもしれません。
最近では、コロンビア大学の研究者たちが開発した新しいAIプログラムは、独自の物理法則を発見したことが話題になりました。これについて、海外の科学系メディア「sciencealert」が解説しています。
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AIが発見した人類には未知の物理変数
コロンビア大学の研究者たちが開発した新しいAIプログラムは、地球上の物理現象から、私たちが現在使っている変数を再発見するのではなく、実際に見たものを説明するための「新しい変数」を考え出しました。
この発見は、物理学と宇宙に対する我々の理解の将来にとって革命的な発見となるかもしれません。
アインシュタインの有名な方程式「E=MC2」は、質量、エネルギー、速度の3つの変数から構成されています。今回「このような変数を自動的に発見することはできないのか」と考えられて研究が始まりました。もし、それが可能なら、科学的発見のプロセスを大幅に改善できるはずです。
とはいえ、現在の物理学に欠陥があるとか、もっと適切なモデルがあるとかということではありません。当然、現在使われている理論や原理は、何世紀にも渡って確立されてきたからこそ存在しています。
コロンビア大学クリエイティブ・マシーン・ラボのロボット工学者ホド・リプソン氏は「この実験では、AIが再起動するたびに、変数の数は同じでした。しかし、特定の変数は毎回異なっていました。要するに宇宙を表現する方法は他にもあり、我々の選択が完璧ではない可能性が十分にあり得るということです」と述べています。
研究チームは、AIが実際に新しい変数を見つけることができるかどうか、つまり、現在の膨大なデータの中から、理論的な理解が追いついていない複雑な新現象を説明するために役立つかどうかということを知りたかったのです。
では、AIはどのようにして新しい物理学を発見するのでしょうか。
まず研究チームは、すでに解明している現象の生の映像をシステムに与え、プログラムに「何が起こっているのかを説明するために必要な最小限の基本変数は何ですか」と質問を投げかけました。
映像は、2つの腕の角度と角速度を4つの状態変数とする「二重振り子」を撮影したものです。AIは数時間、映像と質問を熟考した後「この現象を説明するには、4.7個の変数が必要です」と回答しました。
そこでチームは、既知の変数とAIが選んだ変数を照合してみました。その結果、2つの変数は腕の角度とほぼ一致しました。しかし、残りの2つの変数は謎のままでした。
ただ、AIはシステムが次に何をするかを正確に予測することができたため、研究チームはAIがまだ人類が把握できていない何かを掴んでいるに違いないと考えました。
この研究を率いたソフトウェア研究者のボユアン・チェン氏は「角速度や直線速度、運動エネルギーや位置エネルギー、既知の量のさまざまな組み合わせなど、考えられるあらゆるものと他の変数の関連付けを試みました」と語ります。
しかし、完全に一致するものはありませんでした。つまり、AIは、人類には未知の数学的言語を理解していたということになります。
その後、チームはAIに他の動画も見せました。1つ目は、エアダンサーが風に吹かれるという映像です。そして、AIはその映像を見て8つの変数を持っていると答えました。
そして、まだ明らかになっていない「炎のゆらめき」の映像についても、24の変数があると答えました。変数がマシンごとに異なるのか、それともプログラムを起動するたびに同じ変数が生成されるのかは、チームにとって特に興味深いテーマです。
リプソン氏は「もし私たちが知的な宇宙人に出会ったら、彼らは私たちと同じ物理法則を発見しているのでしょうか、それとも違う方法で宇宙を表現したでしょうか」と語ります。
このことは、将来的にAIが、私たちが現在認識していない新しい概念を支える変数を特定するために役立つ可能性があることを示唆しています。いつの日か、AIが人類の常識となっている物理学を根底からひっくり返す日が来るのかもしれません。