売上5.7兆円「IKEA」が最強ブランドになった3つの理由

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IKEAは数ある家具ブランドの中でも異質な存在です。1943年の創業以来、同社はヨーロッパ・北米・アジア・オセアニアなどへのグローバル展開を進め、世界最大の家具量販のコングロマリットとなりました。

2021年には、同社は419億ユーロ(約5.76兆円)という驚異的な売上高を記録しました。このIKEAの世界的な大成功の秘密について、海外YouTubeチャンネル「PolyMatter」が解説しています。




*Category:テクノロジー Technology|*Source:PolyMatter ,wikipedia ,IKEA

どのようにしてIKEAは多くの人々に愛されるブランドとなったのか?


テーマパークの定義は色々とありますが、「食べ物、衣装、エンターテインメント、小売店、乗り物などがある施設」をテーマパークと定義すると、IKEAはある種のテーマパークといえます。

2017年、2,000万人以上が訪れた世界で最も人気のあるテーマパークは、フロリダにあるウォルト・ディズニー・ワールドのマジック・キングダムです。そして、アナハイム、東京、パリ、香港を含むディズニーパークの来客数を合わせると、年間1億5,000万人が訪れています。

対してIKEAは、なんと合計で4億6,000万人の来客数を誇っています。入場料の有無などの違いはあるとはいえ、IKEAの人気ぶりが良くわかる数字です。

しかしIKEAには、倉庫のような店内と、レストランを案内する一方通行の通路があるだけです。ここまでシンプルなのにも関わらず、なぜIKEAは多くの顧客を惹きつけるのでしょうか。

【1】IKEAの独特な買い物システム


1943年、イングヴァル・カンプラード氏は巡回セールスマンとして、マッチや鉛筆、時計などの日用品を販売しながらIKEAを創業しました。そして、その7年後、彼は家具の販売を開始しました。

大きな商品を遠くまで運ぶのは物流上、困難であると考えたカンプラード氏は、家具をフラットパックにすることで、輸送中の破損の可能性を減らすことに成功しました。そして、カタログを作って、遠方の客にも見てもらい、注文してもらえるようにしました。

1953年に最初のショールームが同じ小さな町に建てられ、1965年には会社の象徴である巨大な倉庫の1号棟が建てられました。以来、ビジネスモデルはほぼ一貫しています。

小売業者は様々な工夫をして、店内で過ごす時間を最大化するように店舗を設計しています。しかしIKEAのこのアプローチは、さらに極端なものです。

IKEAの平均的な店舗面積は約3万5千平方メートルで、8,000以上のアイテムが揃っています。IKEAは都心のデパートと競争するのではなく、繁華街から離れた場所に大きな立体ビルを建設することを常に好んでいます。そのため、はるかに安い不動産で、巨大な駐車場を併設することができるのです。

そして店内では、他では味わえない体験ができます。IKEAでの買い物は、ショールームから、小物を即座に手に取ることができる「マーケットホール」へと続き、最後は倉庫であらかじめ選んだ商品を棚から取り出し、レジで精算するという一方通行のシステムです。

寝室とキッチンという、IKEAにとって最大の収益源となる商品は通常、入り口の方に展示されます。IKEAは、店舗を乗り換え線のように配置することで、買い物体験を完全にコントロールし、すべての売り場を見て回るように仕向けているのです。

このシステムのおかげで、IKEAは多くの店舗の平均滞在時間が1時間半と非常に長くなっています。さらに、ある試算によると、IKEAで購入される商品の60%は予定外の買い物だそう。家具屋という顧客が目的意識を持ち、慎重になりやすいジャンルであることを考えると、この数字は驚異的です。

また、人は自分で作ったものにより価値を見出すという調査結果もあり、IKEAの自分で組み立てるという仕様は欠点から長所に変わっています。また、製造コストや輸送コストの削減にもつながっています。これらの店舗設計が、IKEAの成功の要因です。

【2】IKEAが徹底する「低価格路線」


低価格は、IKEAが自らに課した使命であり「家具の民主化」といえます。そのためIKEAは、多数の店舗があるにもかかわらず、安価であり続けています。例えば、最も人気のある椅子の価格は、インフレ調整後、長期にわたって値下げされています。

IKEAでは、商品の目標価格を設定してから、20人ほどのデザイナーに商品を送り、デザイナーはその制約の中で仕事をしています。最後に、倉庫の設計により、多くのスタッフを必要としないため、運営経費を大幅に削減することができています。

このローコストイメージは非常に重要です。創業者兼CEOであるカンプラード氏は2018年に亡くなるまで、飛行機はエコノミークラスしか使わず、高級ホテルにも泊まらない、そして公共交通機関を使うと主張し、会社の価値観に忠実であることを示していました。

また、巨大な企業であるにも関わらず非上場を貫いていることも、このような低価格の独自路線を徹底できている理由の1つでしょう。カンプラード氏は以前、「非上場企業のままでいることがイケアの驚異的な成功の主因の1つになっている」と語っています。

【3】長年かけて築きあげたIKEAの強固なブランドイメージ


心理学や倉庫のデザイン、低価格よりも重要なのは、IKEAのブランドです。1973年にスイスでスタートしたIKEAは、その後数十年にわたりヨーロッパ全域で国際的な展開を始めました。そして、スウェーデンらしさを大きくアピールしてきました。

2000年から2009年までの間に、過去50年間で最も多い150店舗をオープンし、その多くが北米とアジアに出店しています。現在、IKEAは20万人以上の従業員と433の店舗を持ち、世界最大の家具小売業者であるだけではなく、世界最大の木材消費者でもあります。

IKEAの戦略は、さまざまな市場に参入し、それぞれ最適な場所に少数の店舗を展開することです。例えば、アメリカは50店舗と、IKEAの中で第2位の市場です。一方、17の国や地域には1店舗しかありません。このアプローチの成功が、IKEAのグローバルブランドの証といえるでしょう。

多くの企業が新しい市場に参入する際、メッセージや商品をその地で受け入れられるように最適化していくのに対して、IKEAは、スウェーデンというブランドで成功を納めています。

IKEAのイメージは世界中で非常に強く、ある国に1店舗だけ出店しても、すぐに認知され、愛される存在となります。ミニマルで機能的なデザインの家具や、特徴のある有名な名前など、IKEAは紛れもなくスウェーデンらしいものです。また、鮮やかなブルーとイエローの店舗は、遠くからでもその伝統を感じさせます。

IKEAは、そのビジュアルデザインだけではなく、平等主義であることも発信しています。IKEAでは、あらゆる階級の社員が、肩書きではなく、ファーストネームで呼び合うことが推奨されています。

企業幹部は「アンチ・ビューロクラティック・ウィーク」と呼ばれるプログラムに参加し、店舗のフロアで日々の業務を体験し、同僚と共感することが求められます。このような結びつきは、IKEAにとって良いことであるだけではなく、スウェーデンにとっても良いことです。

実はスウェーデンの企業ではないIKEAの実態


スウェーデンはIKEAの評判を奨励し、大きな恩恵を受けてきました。スウェーデン大使館は新店舗のオープンに積極的に参加し、資金援助までしています。しかし、IKEAはこれらのイメージとは裏腹に、厳密に言えばスウェーデン企業ではありません。法律上は、オランダに近い企業なのです。

IKEAはオランダにある「INGKAホールディングス」が所有しています。そして、その利益は非課税の非営利団体であるオランダの財団に送られ、その財団は別のオランダの財団を経由して間接的に資金を流しています。

そして、知的財産もオランダで登記されている「Inter IKEA」という持ち株会社が所有しています。そして「Inter IKEA」も、オランダの「Inter IKEAホールディングス」に所有されています。

このように、IKEAは法的にも、物理的にも、財務的にも、スウェーデンというよりグローバルな存在となっています。これらの他の企業にはないIKEAの特徴は、同社が約70年間もの間ほとんどビジネスモデルを変えていないにも関わらず、世界でも有数の強力なブランドに押し上げたのです。

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