PayPalマフィアが生み出した大企業は、どのような経緯で創設されたのか?
PayPalは、毎月何百万ドルもの損失を出すのを止める方法を考える必要がありました。また、詐欺行為、クレジットカード会社との競争、eBayの決済システムなどにも対処する必要もありました。
PayPalの元副社長リード・ギャレット・ホフマンは「お金を失うことほど、人の目を奪うものはない」と言っています。そして、その集中力が勝負の分かれ目となりました。
PayPalの元幹部キース・ラボアは、質問回答サイト「Quora」で、PayPalは各個人が一つの仕事に極限まで集中することで成り立っていると説明しています。
PayPalは、個人の達成感が重視されます。また、COOのデイヴィッド・サックスは大きなミーティングを好みません。これは、マスクがテスラのCEOとして心に刻んでいることでもあります。
マスクは、テスラの従業員に対して、大規模な会議は時間の無駄であるとメールを送ったと伝えられています。そして、価値のあるものを何も追加できないのであれば、その場から立ち去るべきだとも言っています。
マスクはeBayの売却で得た1億8000万ドル(約240億円)をテスラの主要な資金としつつ、ロケット会社「SpaceX」も立ち上げました。
また、他のPayPal出身者は、資金を投入して「YouTube」を立ち上げています。
YouTubeのロゴと外観は、チャド・ハーリーがデザインしています。スティーブ・チェンは、YouTubeが機能するかどうかを確認しました。そして、ジャワード・カリムは、デザインとプログラミングの両方に携わっています。
YouTubeを設立したきっかけは、2004年に起きたジャスティン・ティンバーレイクとジャネット・ジャクソンの有名なスーパーボールのハーフタイム事件の動画が見つからなかったことからだそうです。その出来事から、動画共有プラットフォームのアイデアを思いつきました。
カリムが2005年4月23日にYouTubeにアップロードした最初のビデオ「Me at the zoo」は、現在2億回近く再生されています。しかし、YouTubeを成功させるには、3人のPayPal社員の絆だけでは不十分でした。
そこで、PayPalのコネクションが役に立ちます。裏庭でバーベキューをしていたカリムは、友人の元PayPal幹部のラボワに、YouTubeを見せました。その後、ラボワは、PayPalの元最高財務責任者であるロエロフ・バトアにYouTubeのことを話しました。
バトアは、AppleやGoogleなどの大企業を支援するベンチャーキャピタル会社「Sequoia Capital」のパートナーです。そしてバトアは、Sequoia CapitalにYouTubeへの出資を依頼しました。
ホフマンのように、PayPalの幹部がエンジェル投資家になるケースもあります。ティールとマーク・ザッカーバーグが初めて会ったのもホフマンが手配したと言われています。そしてティールはFacebookに50万ドル(約7,000万円)を出資し、その見返りとして10%の株式を取得しています。また、ティールも10億ドル(約1,300億円)以上を手にしています。
当時は、小切手を発行してくれる投資家はほとんどいませんでした。なぜなら、90年代後半のITバブルは、2000年代初頭に崩壊し、多くの人々の夢を壊していたからです。
シリコンバレーでは「消費者向け技術はもうダメかもしれない」とさえ言われていました。しかし、PayPalは、このバブル崩壊後も生き残った数少ない新興企業の1つです。そして、生き残るだけではなく、成功しました。
これは、ネットワークと適切な人々と自分自身を囲むことがいかに重要であるかを示しています。PayPalマフィアは、その後、評価額10億ドル(約1,300億円)以上の非上場新興企業であるユニコーン企業を7社も生み出しています。