現在GoogleやApple、Metaなど多くの企業が様々なウェアラブル端末の開発に取り組んでいます。これらの製品はスマートフォンにとって代わるのではないかと期待されているものです。
しかし現状では、ウェアラブル端末がスマートフォンに代わる製品となるには、多くの条件をクリアする必要があります。これについて、テック系メディア「Android Authority」が解説しています。
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「ウェアラブル端末がiPhoneにとって代わる」ために必要な要素5つ
ウェアラブル端末として現在一般的に普及し始めているのがスマートウォッチです。他にも最近では、VRヘッドセットや、ARグラスなどが注目されつつあります。しかし現状、スマートフォンと比較すると様々な課題が見られます。
◇ 【1】より強力で省電力かつ小さいプロセッサ
スマートウォッチのような小型のデバイスでは、プロセッサーが最大の制約になっていました。しかし最近では、この問題については大きく改善されつつあります。
サムスンの「Galaxy Watch 4」や「Apple Watch Series 7」のプロセッサの十分に強力になっており、YouTubeを見たり、サードパーティ製のストラップでビデオ通話をしたりするユーザーも現れています。
また、AR/VRヘッドセットをスタンドアローンで動作させられるようなチップセットも現れはじめています。テック系メディア「MacRumors」が共有した経済紙記者のマーク・ガーマン氏の報告によれば、Appleが開発中と噂のAR/VRヘッドセットにはMac向けの強力なプロセッサ「M2」が搭載されるかもしれないそうです。
しかし、VRヘッドセットにはスマートフォンと同程度、あるいはそれ以上のプロセッサの搭載スペースがあるものの、スマートウォッチやARメガネなど、一日中装着することを想定したものには、よりスリムなデザインが求められます。
そのため、チップのサイズ、ひいては性能に上限が設けられてしまうことが現状の課題です。現在のスマートウォッチのほとんどは、複数のアプリを同時に処理することができません。さらにARグラスでは、より強力で省電力かつ小さいプロセッサが求められるはずです。
◇ 【2】より小型で優秀なバッテリー
プロセッサーとも関連してきますが、バッテリー駆動時間はウェアラブル端末の大きな課題です。高速なプロセッサーほど消費電力は大きくなりますが、ウェアラブル端末ではバッテリーを小型化する必要があります。
そのためメーカーは、性能とバッテリー持ちのどちらを重視するかの選択を迫られてしまいます。「Galaxy Watch」が毎日充電しなければならないのに対し、ガーミン製品の多くが連続して数週間も使用できるのは、この理由によるものです。
VRの場合、さらにバッテリーサイズは大きな課題となります。。例えば、「Meta Quest 2」は、その性能を発揮するため、電源ケーブルや外部バッテリーパックなしでは2時間程度の連続使用が上限となっています。
プロセッサ性能の目覚ましい進化に対し、ここ数年間のバッテリーそのものの性能の進化は比較的小さなものです。特にARグラスのようなウェアラブル端末の場合、スマホが24時間以上駆動するのに対し、1日未満の駆動時間しかないのは大きな課題になるはずです。
◇ 【3】フレキシブルな有機ELパネル
これは主にスマートウォッチにおける問題ですが、画面が小さいのは当然ながら大きな制限です。いくらスマートウォッチの性能が向上しても、人間の目や指の限界を考えると、2インチ以下の画面でできることには限界があります。
この問題を解決する一つの方法は、フレキシブルな有機ELパネルですが、手首に巻けるほど丈夫なものはまだ見つかっていません。
◇ 【4】省電力で高速なワイヤレス接続
スマートフォンと異なり、ほとんどのスマートウォッチにはUSB-Cポートを搭載する十分なスペースがありません。たとえあったとしても、手首につけたまま充電したり、外部機器と接続したいとは思わないはずです。
AR/VRヘッドセットには有線ポートがあり、PCなどに接続して使用することもできます。しかし、ARグラスなどの場合は特に有線接続が煩わしいという問題があります。最終的には、有線接続が不要になるくらい、無線接続が進化して一般に普及することが必要になるはずです。
しかし、高速ワイヤレス接続はバッテリーの消耗を激しくしてしまいます。これはウェアラブル端末の大きな課題の1つです。
◇ 【5】タッチ操作に代わる新しい操作体系
スマートフォンの操作方法には、ほとんど制限がありません。画面上のボタンに不満がある場合は、BluetoothやUSB経由でマウス、キーボード、ゲームパッドなどの外部コントローラを接続することすらできます。また、音声アシスタントを使うこともできますし、タッチレスジェスチャーを使えば、体が不自由な方でも操作できます。
この点、腕時計は根本的にスマホにかなわないかもしれません。腕時計の性質上、いくら画面を大きくしても片手でのキーボード入力などが必須になります。また、ディスプレイが手首に装着されている状態では、当然ながら外部の入力機器を使う意味は全くありません。
とはいえ、腕や指のジェスチャーなどで入力出来るようになれば、この欠点は大きく覆る可能性もあります。とはいえ、当面は音声とシンプルなタッチ操作に頼ることになるでしょう。
AR/VR機器にはもっと可能性がありますが、現時点では、ヘッドセット機器の操作はジョイスティックのようなモーションコントローラに依存しています。仮想キーボードでの入力が面倒なことです。コントローラーを使わないハンドトラッキングは、場合によっては選択肢のひとつになりますが、触覚フィードバックがありません。ありがたいことに、現実のキーボードをトラッキングするオプションがあり、Metaは代替のハプティクスを研究していますが、これらが目新しいものではなく、標準となるには、おそらく数年かかるでしょう。
◇ ウェアラブル端末はスマートフォンを追い越せるか?
「Android Authority」は、スマートウォッチはスマホの代わりにならないだろうと指摘しています。スマートウォッチはスマホのアクセサリーとして、あるいは一時的な代用品としてうまく機能するものの、それ以外はあまりにも制限されすぎています。
AR/VRヘッドセットは、スマホよりもノートパソコンやデスクトップに取って代わるものとなるかもしれません。バッテリーの持ちが良くなったとしても、そのサイズや性質上、基本的には屋内での使用に限られます。
そうなると最も有力なのはARグラスですが、視野角、入力方法、一日中使えるバッテリーなど、様々な課題が山積みです。また、コスト面を考えても、しばらくの間はスマホのほうが優秀なのは間違いないでしょう。
しかしAppleやGoogle、Metaを始めとした多くのテック企業がこの分野の覇権を目指し、動き始めています。固定電話から携帯、スマートフォンへの移り変わりのように、キラー的な製品が登場すれば、この状況は一気にひっくりかえるかもしれません。