なぜスターバックスはシュルツCEOが復帰するほど追い詰められたのか?
急激なインフレや人材不足に悩まされるスターバックス。しかし、スターバックスが苦戦している真の理由は内部にもあります。
◇ スターバックスを苦しめる「モバイルオーダー」
顧客と従業員の不満につながるもうひとつの問題が、スターバックスのモバイル/オンライン注文システムです。モバイルオーダーの導入は、コロナ渦では必要なことでしたが、長期的に見ると頭痛の種になっているようです。
モバイルオーダーが従来の注文と違うのは、限界がないという点です。人々が店に来て直接注文する場合、列の長さには自ずと限界があります。つまり、すでに20人が並んでいれば、後から来た人はその日はスターバックスに並ぶことを避ける可能性が高くなります。
しかし、オンラインでの注文にはそれがありません。その上、店舗に長蛇の列ができていれば、注文をさばける限界にすぐ達してしまいます。そして、ネットで注文した顧客が来店したときに「まだ注文が来ていない」というトラブルが発生してしまうのです。
また、モバイルオーダーの場合、口頭で伝えるよりも簡単なため、より複雑な注文をする傾向があるそうです。そのため、モバイルオーダーには特に対応に時間がかかり、混雑時の対応をさらに難しくしています。
さらに、このモバイルオーダーには材料切れが反映されないことが多く、作ることができない注文をお客様にさせてしまうことがあります。モバイルオーダーが改善されないままでは、顧客と従業員の間にすれ違いが生じ、スターバックスは長期的に顧客を失うことになる、と「Logically Answerd」は指摘しています。
◇ ハワード氏がスターバックスCEOに復帰した真の理由は「労働組合」
これまで述べてきたすべての要因が、スターバックスを悩ませていることは間違いないでしょう。しかし、ハワード氏の復帰の最大の理由は、スターバックスの従業員の労働組合結成だと「Logically Answerd」はいいます。
何十万人もの最低賃金労働者を抱えるサービス業にとって、労働組合はしばしば最大の恐怖です。スターバックスの商品は高額なものが多いものの、実はこの金額はあまり収益に反映できていません。
スターバックスの純利益率は、歴史的に見ると15%弱で推移しています。これは外食産業としては堅実な数字ですが、賃金を上げるほどの余裕はあまりありません。つまり、スターバックスやアマゾンのような利益率の低い企業は、労働組合を結成されると困るのです。
しかし、スターバックスの従業員はこの1年、かなり強気な姿勢を示しています。スターバックスが最低賃金を時給15ドルに引き上げることを約束したのもこの働きかけによるものです。
これは、労働組合への参加を阻むための最後の手段でした。賃金を上げる前に、組合員を一人残らず解雇しようとしていたのです。スターバックスは、店舗にマネージャーを送り込み、組合への参加を思いとどまらせようとさえしていたそうです。
そして、スターバックスは組合潰しをさらに強化しようとしています。5月の初め、ハワードCEOは組合に加入していない労働者にのみ利益をもたらす一連の昇給を発表しました。彼は、組合員の賃金を上げることはできない、それは組合の承認なしに新しい賃金を課すことになるからだ、と示唆しました。スターバックス労働者連合は当然、組合員を差別しているとしてハワードCEOを告訴し、反撃に出ました。
この戦いがどうなるかは分かりませんが、少なくともスターバックスを危険な状況に追い詰めていることは間違いありません。長年、スターバックスは、従業員の福利厚生や待遇に関しては、立派なイメージを維持してきました。しかし、労働組合と激しくぶつかり合うことは、そのイメージを簡単に崩してしまうでしょう。
結局のところ、スターバックスは内部的にも外部的にも混乱に陥っています。スタッフ不足と供給不足に悩まされる一方で、急激なインフレと問題のあるシステムに対処しなければならず、その結果、顧客はかなり不満を抱いています。
その上、スターバックスは、これまでかなりの成功を収めてきた社内の組合活動に対して、猛烈な勢いで戦いを挑んでいます。ハワード氏がスターバックスに戻ったことは、この状況がいかに危機的であるかを端的に物語っているといっても過言ではありません。
もしスターバックスが組合に屈した場合、スターバックスはさらに高い営業費用に対処しなければならず、顧客の維持がさらに困難になります。一方、組合に譲らなかった場合、スターバックスは人手不足に直面し続けるだけでなく、評判を落とすことになるでしょう。ハワードCEOは、まさに八方塞がりともいえるこの状況を乗り越えることを求められています。
未だに予断を許さない状況ではありますが、コロナ渦はようやく収まりの兆しを少しづつ見せています。しかし、飲食店にとって失われた2年は非常に大きなものであり、世界的なインフレも合わさったこの困難な状況には、かのスターバックスでさえも苦しめられているのです。
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