» スティーブ・ジョブズの「壮大な失敗」からAppleが22年かけて学んだこと
Appleの創業者である「スティーブ・ジョブズ」はiPhoneやiPodなど数多くの革命的な製品を生み出した人物です。
しかしそんな彼でも、新製品やサービスで何度も失敗したことがあります。そんなジョブズの大きな5つの失敗を、Appleに詳しいYouTubeチャンネル「Apple Explained」が解説しています。
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スティーブ・ジョブズの成功の裏にある失敗とは?
スティーブ・ジョブズはすべてにおいて成功を収めたわけではありません。特に自信をもっていたにも関わらず失敗した製品として有名なのが「Power Mac G4 Cube」です。
◇ 【1】ジョブズが「Power Mac G4 Cube」
1990年代後半にAppleのCEOに復帰したあと、ジョブズは「iMac」や「iBook」「PowerBook」「Power Mac」など、革新的な製品を次々と世に送り出しました。これによってAppleは危機から脱し、黒字化していったのですが、2000年に販売された「Power Mac G4 Cube」は、明らかに失敗した製品でした。
ジョブズは、既に販売されていた高スペックの「Power Mac G4」(約20万円)とエントリーユーザー向けの「iMac」(約4万円)の間に市場があると考えました。そこで制作されたのが「Power Mac G4 Cube」です。
まずジョブズは「Power Mac G4 Cube」のデザインにこだわりました。ほとんどの部品を小型化し、透明のポリカーボネートで覆われる画期的なデザインは、1年後に発売されたiPodにも大きな影響を与えたといわれています。
「Power Mac G4 Cube」の斬新さはデザインだけではありません。ファンを必要としない冷却システムや内部の電子機器を持ち上げることで、必要に応じて簡単にパーツを交換する事ができる点など、多くの革新的な技術が搭載されていました。
しかし、ジョブズがあまりにこだわったゆえ「Power Mac G4 Cube」の価格はなんと約22万円に。「Power Mac G4」と比べても約2万円も高くなってしまったのです。
これは、高スペックの「Power Mac G4」と、エントリーモデルの「iMac」の間の市場を狙っていたジョブズにとっては大きな失敗でした。ジョブズは発売当時「数百万台は売れる」と豪語していたものの、結果として「Power Mac G4 Cube」はたったの15万台しか売れませんでした。
発売から1年後の2001年7月、「Power Mac G4 Cube」の無期限生産停止が発表されました。この製品について、現Apple CEOのティム・クックは「壮大な失敗」だったと表現しています。
◇ 【2】アプリを入れるために今では当たり前の「App Store」もジョブズは否定しました。
iPhoneには「SMSメッセージ」「Safari」「iPod」など、すでに多くのApple標準アプリが搭載されていました。
しかし、当初のiPhoneには「App Store」がなく、Webアプリを利用するといった仕様でした。これは利用者や開発者にとって使い勝手がよくありませんでした。
しかし、ジョブズは「高価なマーケットプレイスを作って運営する必要がない」「新しいバージョンのiOSがリリースされてもWebアプリなら壊れない」「どのデバイスからでもアプリにアクセスできる」などの理由からWebアプリにこだわっていました。
ただ、Webアプリには欠点がありました。ユーザーにとってサードパーティのアプリが利用出来ず使いづらい点に加え、アプリ開発者も「ウェブアプリ」では収益化する事が出来ないという点です。
Apple内では「App Store」を作り運営し「Apple標準アプリのように滑らかに動くこと」「マルウェアに感染していないこと」「個人情報を搾取していないこと」などを公開前に一つ一つ審査してから販売するべきだという声が上がりました。
なぜなら収益の点でも、App StoreであればAppleに手数料が入り、追加収入を得ることができます。さらにアプリ開発者も、よりお金が稼ぎやすくなるというメリットがありました。
しかし、初代iPhoneは結局「App Store」ではなくWebアプリでアプリの提供を行い、多くのユーザーとアプリ開発者を失望させました。さらにユーザーの中には、Webアプリを使って自分のiPhoneをいわゆる「脱獄」した状態にするユーザーすら現れました。
そして2007年10月、ついにジョブズは「App Store」のリリースを決断したのです。
ジョブズが当初躊躇していたにもかかわらず、App Storeは瞬く間にヒットしました。サービスが始まって最初の週末には、1,000万を超えるアプリがダウンロードされ、ストア開設から1年も経たないうちに、5万種類ものアプリケーションで埋め尽くされるようになったのです。
◇ 【3】サービスを開始してからすぐに荒れ放題になってしまった「iTunes Ping」
2010年、ジョブズは「iTunes Ping」という新しいサービスを発表しました。ジョブズはこのサービスを「Facebook」や「Twitter」と「iTunes」が合体したようなもので「音楽のSNS」と表現しています。
具体的には、ユーザーはお気に入りのアーティストをフォローしたり、投稿にコメントしたり、友人のアクティビティを見たりすることができるといったものでした。
しかし、このサービスは開始直後から問題が多発しました。まず、Facebookとの連携の交渉がうまくいかず、機能が削除されてしまいます。その為「iTunes Ping」を利用しているかもしれない既存の友人を簡単に見つけることができなくなってしまいました。
次に、サービスを開始してから24時間でスパムが大量発生し、詐欺リンクが多数投稿されました。Appleはこのリンクを削除するのに4時間以上かかり、Appleが「iTunes Ping」にスパムフィルタリングを搭載していなかったという疑惑を引き起こしました。
Facebookとの連携の失敗やスパムなど「iTunes Ping」は導入直後からユーザーとアーティストにとって悪夢のような存在となり、このサービスは大きな支持を得ることはなく、結局2年間の運用の後、閉鎖されました。