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ブラジルは世界有数の「eスポーツ大国」です。2021年、世界的なFPSタイトル「レインボーシックス シージ(R6S)」の世界大会ではブラジルのチームがベスト3を独占し、新世代のeスポーツタイトル「VALORANT」でも強い存在感を見せています。
Six Invitational 2021で優勝したブラジルのチームNiP
そんなブラジルで今、eスポーツの影響を大きく受けつつあるのがブラジルの貧民街(ファベーラ)です。この新たな革命について、海外メディア「Rest of world」が紹介しています。
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ブラジルの貧民街で起こりつつある「eスポーツの旋風」
ブラジル人の5人に1人は、いまだにインターネットにアクセスできません。貧民街を意味する「ファベーラ」では、未だに43%の人々がモバイル回線にアクセスできません。更に、これらの地域では通常のブロードバンド回線すら整備されていないのが現実です。
しかしそんな状況の中でも、eスポーツ市場は成長を続け、大きな旋風をおこしつつあります。
ファベーラで育ったNOBRU氏とCEROL氏は、ブラジルで最も影響力のあるストリーマーです。サンパウロ郊外で生まれた20歳のNOBRU氏は、一人称視点のモバイルFPS「Free Fire」で活躍しています。
彼は2019年に開催された「Free Fire World Series」で世界チャンピオンになったことから「eスポーツ界のネイマール」と呼ばれる存在です。NOBRU氏のインスタグラムのフォロワーは1200万人を超えており、YouTubeチャンネルのフォロワー数も1300万人を超える人気ぶりです。
リオデジャネイロ郊外出身のCEROL氏も同じく「Free Fire」で有名になり、ブラジルのベストストリーマー賞を受賞したこともあるストリーマーです。ちなみに、彼らがプレイする「Free Fire」はブラジル人ゲーマー全体の70.9%がプレイしているそうで、この大きな影響力にも納得がいきます。
このCEROL氏はNOBRU氏とともに、ファベーラ出身の10代の若者などの雇用とトレーニングに重点を置いたeスポーツチーム「Fluxo」を共同設立しました。このチームのスポンサーには、TikTokやNext(銀行)、Casas Bahia(巨大家電チェーン)などの大手企業がついています。
モバイルゲームだけではありません。ブラジルでは高額なゲーミングPCでの体験を提供するため、2019年、eスポーツトレーニング施設である「Afro Games」がリオデジャネイロ北ゾーンのファベーラに設立されました。
リオデジャネイロの貧民街パラダ・デ・ルーカスで生まれたガブリエラ・フェレイラさん(18)は、この「Afro Games」の「League of Legends(LoL)」部門のプロ選手として採用されました。
彼女はプロ選手になる前、ネットカフェでLoLをプレイしていたといいます。ネットカフェの料金は1時間あたり40セント(約36円)程度とリーズナブルで、余暇にはお金さえあればここでプレイしていたそうです。
ブラジルのゲーム文化は急発展しており、2021年のゲーム市場の売上は23億ドルに達すると言われています。ブラジル最大級の小売チェーン、Casas Bahia社のゲームおよびゲームアクセサリの売上は、2019年から2020年にかけて789%、2020年から2021年にかけて196%も急増しているとのこと。なお、これらの新規購入者のほとんどが18歳から30歳で、月収2,000ドルまでの中流・下流階級の世帯に属しているそうです。
もちろん、ファベーラ出身で活躍するストリーマーやプロ選手の数はまだまだ少なく、経済的な格差が簡単に縮まることはないでしょう。しかし、このようなファベーラ出身のeスポーツ選手やストリーマーの活躍は、ブラジルの貧民街のeスポーツブームを爆発的に促進するかもしれません。