auのポータルアプリ『au サービス TOP』がリニューアルされ、新たに 『auサービスToday』として提供が始まりました。このリニューアルは、KDDI(au)のサービスをGunosy(グノシー)が開発、運営するという取り組みで、スマホユーザーにはなじみの深い大手企業による“注目のコラボ”となっています。今回はその2社の担当者にインタビューを行ない、ユーザーとメディアの2つ視点から気になる質問をぶつけてみました。
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今回お話を聞いた人
- 藤原寛史さん:株式会社Gunosyメディア事業本部アライアンスメディア事業部部長
- 松本泰斉さん:KDDI株式会社サービス統括本部 5GxRメディア推進部
『auサービスToday』ってどんなサービス?
何が得なの?
——ポータルサイトやニュースアプリは群雄割拠の状態ですが、そこで新たにスタートした『auサービスToday』はどのようなユーザーを想定して開発、提供されているのでしょうか?
【KDDI松本さん(以下、松本)】世代や性別、地域などに関わらず多くの人にお使いいただけるアプリですが、おもにターゲットとして想定しているのは「スマートフォンに機種変更してすぐの人」です。そういう意味では、自分から積極的にアプリをインストールしたりSNSを駆使して情報を集めたりする若者というより、40〜50歳代の人で「まだ、スマホは使いこなせていないな」と感じている人に気持ちよく、便利に使っていただけるアプリになるよう心がけてつくりました。
【Gunosy藤原さん(以下、藤原)】ニュースだけでなく、auサービスの紹介も含めてアプリ内で提供しています。ニュースアプリではなく「スマートフォンの魅力に気づいてもらえる、スマートフォンアプリ」を目指しました。
——リニューアル前の『auサービスTOP』と同じく、対応するのはAndroid、iPhone、iPadのアプリでしょうか? ブラウザ版などの提供予定はありますか?
【松本】現在(2021年夏時点)はアプリのみでのご提供で、ブラウザ版は未定です。アプリはauで販売する端末にプリインストールしていますが、au IDがなくても使えるので、povoやUQモバイルのお客様はもちろん、ドコモさんやソフトバンクさん、楽天モバイルさんの回線をお使いの方でもご利用いただけます。
——配信される情報のパーソナライズされた内容ですか? また、パーソナライズされた情報を提供する場合はどのような要素を元にしているのか教えてください。
【藤原】パーソナライズした内容を配信しています。これはアプリ内のアクティビティに基づきレコメンドしていく仕組みで、リリース直後から数ヶ月かけてパーソナライズの仕組みを進めていく予定です。年齢、性別に出し分けもありますが、それ以上に重視しているのはユーザーの行動です。アプリの初回起動時は出し分けのパターンが少ないですが、一定数の記事を読んでいただくと、精度が上がっていく仕組みです。その後も、ユーザーの直近の記事閲覧状況にあわせて表示する記事を調整するなどしています。
——Gunosyがリニューアルに関わることで実現できた強みや個性を教えてください。
【藤原】Gunosyとして提供できた価値は、大きくわけて3つあると思います。
1つ目は独自の記事推薦アルゴリズムの導入です。ニュースアプリとメディア運営の知見があるので、それを『auサービスToday』にも活かしています。
2つ目はアドネットワークの活用とニュースを読む体験に適した広告表示です。今回のリニューアルでは、記事タイトルの表示領域や本文などの読みやすさを意識したデザイン修正を行いました。ニュースを読む際には、コンテンツと広告が混在した状態になるのですが、文字が極端に小さい広告が複数出てしまうと、認識しづらい情報が並んでしまい、かえってストレスを感じやすくなってしまいます。これでは収益にも繋がりにくいですし、情報提供するにあたってもノイズでしかありませんよね? ニュースを読む体験をメインに、その体験を損なわない形の広告をどうしたら実現できるか、という点を意識してデザインに落とし込んでいます。
3つ目は掲載メディア数の豊富さです。Gunosyとして既にお付き合いのあるメディア各社にお願いすることで、サービス開始時点から『auサービスToday』には幅広いジャンルの多くのメディアに参画いただきました。
——なるほど。ニュースが読める、広告もうっとうしくない、ということはわかりました。他にも、何かこのアプリを使うことで得ができることがあれば教えてください。
【松本】『auサービスToday』auのおすすめサービスを掲載しているので、「今日『au PAY マーケット』のセールをやっているよ!」「クーポンがあるよ」という情報をアプリの中でチェックできます。
【藤原】
『Ponta』アカウントと連携させて、ポイントを貯めることもできますよ。あと、TVCMと連携していることもあるので関連するコマーシャルが目に入ったら、このアプリを立ち上げていただきたいですね。
メディアとして気になる
『auサービスToday』の立ち位置、方向性
——ここからはちょっと視点を変えて、コンテンツ・パブリシャーとして記事配信をしているAppBankという立場から気になることを質問させていだきます。『auサービスToday』が重視しようとしているのは、どのような種類のニュース、情報ですか?
【藤原】現状、40〜50代の方々の割合が大きく、経済や政治・社会など“堅めのニュース”が読まれやすい傾向があります。これらのニュースについては、情報ソースの正確性や比較検討可能なことが重要になると考え、大手新聞社など長年運営をされている媒体さんを中心に、複数のソースから読めるように意識しています。ちなみに『グノシー』アプリはもう少しエンタメ寄りで、若いユーザーさんが多いです。そこは、アプリの個性というか、カラーの違いですね。
【松本】媒体さんの特徴とは別の話としてメディアのフォーマットについてお話しすると、『auサービスToday』はスマホならではの体験を重視しているので文字や写真だけでなく動画のニュースも配信しています。媒体社さんにはフィード連携をご利用いただくことで、動画ニュースも配信していただけます。
——昨今フェイクニュース問題やインターネットメディアの在り方をめぐり様々な議論があります。ニュース配信を担うお立場として、このような問題に対する思い、お考えがあれば聞かせください。
【藤原】フェイクニュースなどについては、問題意識をもって取り組んでいます。記事の信頼性を担保することがまず重要であり、安定的に正確な記事提供をしていただける媒体社さんとの連携を進めています。また、社内ではアルゴリズムによる記事の選定だけでなく、「今、触れる価値のある情報」を編集者の選定により見えやすい位置に掲載することで、特にお伝えするべき情報を抽出しています。アルゴリズムと編集者の判断を掛け合わせ、速報性と信頼性のバランスを保つことを目指しています。
——ニュースの読まれ方は時代と共に大きく変わります。先ほど「スマホならではの体験」というお話がありましたが、昨今はVRやスマートスピーカーの普及も進んでいます。そういった状況で、ニュースの読まれ方を中長期的に考えた場合、ニュースアプリの在り方をどう考えていますか?
【藤原】それに関しては、私なりにというか個人的な考えをお答えします。情報やニュースというのは、古来は口頭でコミュニケーションから始まり、石板やパピルスで時間と空間をまたいで共有できるようになりました。その後、活版印刷の実用化で情報の流通量が爆発的に増えました。蓄音機やカメラの登場でマルチメディア化が進み、電波を使うラジオやテレビの登場で拡散性がさらに高まり、インターネットの登場で双方向性が生まれ、即時性が高まりました。情報の発信や受け取りのハードルが下がることで、取捨選択や編集を経ることなく流通する情報が多くなりました。このような状況から、フェイクニュースの問題が顕在化しやすくなっている、と考えています。
このような背景でモバイルインターネットが普及したことで、インターネットが起こした情報量の爆発と即時性に拍車がかかり、「情報の正確さ」の重要性がどんどんと高まっている状況です。ニュースは「何が起こったか。誰が言ったか」ということも大切ですが「どう編集されたか」も極めて重要です。発信者としては編集の意図にも注目して偏りのない情報を提供する、あるいは受け手にとっては惑わされないリテラシーが、さらに重要になると思います。
人間の脳が処理できる情報量は古来から大して変わっていないとすると、キュレーションやメディアとして提供する情報のラインナップを偏ったものにしない、多面的な情報を提供することが求められます。その点において、編集者による手動編集とアルゴリズムによる自動ピックアップのハイブリッドで記事選定を行うのは、具体的な解決アプローチの一つになるかと思います。
新しい情報フォーマットとしてのVRやスマートスピーカーに関しては、スマートグラスやスピーカーでニュースや情報をシームレスに取得できるようになれば良いなと思います。ニュースをVRで見られるとより没入感のある体験にはなりますが、同時に時間あたりに読める情報量は減ります。幅広いソースの情報を並べてみる場合はテキストなどの記事、ひとつのトピックスを深堀りする場合は動画やVR、という形で使い分けることは有効な気がします。
【松本】KDDIは基地局や光ファイバーなどの物理インフラを持っています。それとGunosyさんの技術や知見を組み合わせてシナジーを生んでいきたいですね。
——それは楽しみですね。今日は、貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。
【松本・藤原】ありがとうございました。
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