組織改編を行い、6つの制作部門を新設したディライトワークス。その1つである第2制作部が「Fate/Grand Order Studio」(以下、FGOスタジオ)という名で『Fate/Grand Order(FGO)』の企画・開発・運営を担当し、新たなスタートを切りました。
AppBank.netでは、「FGOスタジオ」のキーマンとなる人物へ採用についてインタビューする連載をおこなっています。
前回はスタジオ長・石倉正啓氏と、第2部開発ディレクター・カノウヨシキ氏にお話をうかがいましたが、今回はリードゲームデザイナーである堀合将仁氏にインタビューを実施。
業界で長いキャリアを持つ堀合氏にゲームデザイナーに必要なスキルや「FGOスタジオ」で働くことのメリットや楽しさについてお聞きしました。(文:カワチ)
ゲームデザインとは新しい経験の場を整える仕事
——まずは堀合さんの簡単な経歴をお聞かせください。
堀合氏:ゲーム業界での最初の仕事はアスキーの『ツクール』シリーズのテストプレイヤーです。図らずもその業務を通じて様々なジャンルのゲームの仕組みを学ぶことができました。
その後は会社を移り、プランナー、ディレクターとしてコンシューマーゲームを中心に様々なタイトルに関わってきました。近年では携帯電話用のゲームを手掛けることが多くなっていきました。気が付いたらゲームの開発歴が20年を超えていましたね。
——ディライトワークスでのキャリアはいかがでしょうか?
堀合氏:2016年1月に入社しました。『FGO』にはメインシナリオでは第1部の第6章(第六特異点 神聖円卓領域キャメロット)、イベントでは「鬼哭酔夢魔京 羅生門」あたりから開発に参加しています。
——ゲームデザイナーという職種についてお聞かせください。ゲームデザインとはどういうものなのか、また『FGO』ではどのような部分を示すのかお聞かせください。
堀合氏:簡単に言うと「新しい遊びの場を整える仕事」です。『FGO』では「物語を進めつつ、最中でバトルを行い報酬を得る」というゲームの軸となる遊びは変わりません。その上で『FGO』では「同じことをやらない」というのが命題として掲げられています。
それを実現するために、新機能はもちろん、マップやUI等見た目の部分や、イベント用のパラメーターを用意し、新たな物語を「遊びのツアーガイド」として、それまでのイベントとは違った体験としてユーザーの皆さんにお届けする、というのが「FGO」におけるゲームデザイナーの役割です。
また、それをより快適に楽しんでいただくため、恒常的に使用される機能の追加、改修の検討についてもゲームデザインの人間が担当しております。
——堀合さんは長くコンシューマーとスマートフォン向けのゲームを手がけることの違いはありますか?
堀合氏:スマートフォン向けのゲームはコンシューマーと違い、ユーザーさんがいつでもはじめることができて、飽きたらすぐに止めることもできます。そのため、つねに新しいことに挑戦して新鮮なおもしろさを提供する必要があります。
——アップデートが可能なスマートフォン向けのゲームですと、さまざまな意見がユーザーから届くと思いますが、どこまで参考にされたりするのでしょうか?
堀合氏:機能改修についてはユーザーさんからいただいたご意見等も含め、重要な事項については、誰か個人の判断で決められるのではなく、TYPE-MOONさんとの会議の場で、主観、他観、客観等、様々な視点を交え意見を交換しながら慎重に決めていきます。
——『FGO』では、シナリオを元にイベントの遊び方を考えていく方法と、遊び方を考えた上でシナリオを作っていくという2つの方法を実践していることを肉会で語られましたが、具体的にどのようなフローで完成に導いていくのかお聞かせください。
堀合氏:以前肉会にてお話しした「2つの方法」というのは極めて極端な言い方で、実際には毎回決まったフローがあるわけではなく、イベントごとに異なります。
例えば、イベント設計の完成までに必要な10の工程があるとして、TYPE-MOONさんからそのうち5つの工程についてアイディアをいただいた場合、残りの5つの工程を埋めて一つのイベントとしてまとめるのが我々の仕事です。その中でシナリオが先行している場合と、ある程度プロットや、やりたいことがあった上でシステムを固めてからシナリオが煮詰められていく、ということがあるのが「2つの方法」のお話でした。
今の例えのように、ゲームデザインに関しては明確にTYPE-MOONさんのパートとディライトワークスのパートが分かれているという感じではなく、それぞれがアイディア、それに対する意見を持ち寄ることで一つの形になっていきます。
——TYPE-MOONさん側からゲームデザインについての相談や要望もあるのでしょうか?
堀合氏:はい。そこがほかのタイトルと『FGO』のもっとも違うところです。TYPE-MOONさん自身がこのゲームの開発に参画されていることもあり、最初に「ここのゲームデザインはこうしたい」という具体案をいただきます。その後TYPE-MOONさんからいただいた具体案の「おもしろさ」の部分を正しく理解し、そのうえで実現性やスケジュールなどを調整し、ゲームとして具体的な形にすることが我々の重要な役割だと考えています。
——実現に苦労したイベントなどもありますか?
堀合氏:思い出深いのは「デッドヒート・サマーレース! 〜夢と希望のイシュタルカップ2017~」です。『FGO』のシステム上でレースがやりたいと言われたときは途方に暮れました(笑)。ただ、機能上の制限についてもTYPE-MOONさんはきちんとご理解いただいていますし、そのなかでどうやってレースの形にしていくかをお互いにアイディアを出し合って決めていきました。
ゲーム業界未経験でも、大切なのは「考え方」と「熱意」
——ディライトワークスにはゲームデザイナーのチームがあるのでしょうか?
堀合氏:はい。今はゲームデザインのチームとしてのメンバーは7名いて、新しいイベントの他、新章の追加、新機能の追加、既存の機能の改修の検討などを請け負っていますね。
——チームには若い人などもいるのでしょうか?
堀合氏:2018年に新卒で入社した人もおり、まだ慣れないながらもすでに現場で機能の改修などを担当してもらっています。一方で外部スタッフのなかには自分よりも年上の人もいますね
——ゲームデザインは業界の経験がなくてもできるものなのでしょうか?
堀合氏:はい。ゲームデザインは「スキル」というよりも「考え方」が重要な仕事です。それは日常の出来事に対しても同じですので、そういった「何についても考える」という下地、習慣がある人は、ゲーム開発の経験がなかったとしても本人のやる気と熱意があればできると思います。もちろん、わからないことはチームのみんなでバックアップします。ゲームを作るのが好きという気持ちがあれば挑戦してみてもらいたいです。
——熱意があれば可能ということですが、事前に勉強しておくといいことなどはありますか?
堀合氏:『FGO』に関して言えば、TYPE-MOON作品が好きという気持ちが重要です。私自身も新しい小説や映像作品が登場するたびに1人のファンとして楽しませていただいていますが、そういった熱意のある方はこの仕事にマッチするのではないかと思います。
また、ゲームデザイン全体ではコミュニケーション能力も重要です。ゲームデザインは自分の考えをアートデザイナーやプログラマーに形にしてもらう仕事なので、仲間との意思疎通がとても重要になります。
スマートフォン向けゲームを作り続けることができる喜び
——サービス開始から3年が経過し、2018年にはついに世界セールスの第1位に輝いた『FGO』ですが、堀合さん自身、改めて振り返ってみていかがですか?
堀合氏:『FGO』は、TwitterなどのSNSを使ったユーザー同士のコミュニケーションも盛んなゲームで、その盛り上がりも作品を支える重要な要素であると考えています。
メインクエスト第1部最終盤の「終局特異点」の戦いはユーザー同士のコミュニケーションを意識した仕立てのシステムだったため、個人的にも思い入れがあります。自分自身も含め、言葉では言いあらわせない一体感がありました。それから夏に開催する周年イベントや冬に全国をまわる「FGO冬祭り」などのリアルイベントも印象深いです。ユーザーさんの楽しむ顔を直接見ることができ、このときは『FGO』の開発にかかわっていてよかったなと感じました。
——堀合さん自身はディライトワークスに入社したことでよかったと感じることはなんですか?
堀合氏:たくさんありますが、端的に述べると「自分がユーザーとして楽しめる作品を創れること」、「原作者の方々と一緒に制作できること」、「そんな作品を創り続けられること」の3つになります。
1つめですが、シリーズ物など、長い期間、同じゲームを作り続けていると単純にゲームとして楽しめなくなってしまうこともあるのですが、『FGO』に関しては3年間ずっと楽しみながら新鮮な気持ちで制作できています。
2つめは私自身、過去に原作のある作品のゲーム化を手掛けてきましたが、ここまで原作者の方々と一緒になって新しい作品を創る、という経験はありませんでした。会議の場などで色々なアイディアが飛び交い非常に楽しく、貴重な経験をさせていただいている、と思っています。
3つめに関しては、日々新しいゲームが次々とリリースされていますが、その中でも『FGO』はたくさんのユーザーさんに楽しんでいただいています。ユーザーさんと一緒に創り続けることができます。また、復刻イベントなどでは、新しい要素として考えていた部分を追加できるのもクリエイターとしてはうれしいです。
——「FGOスタジオ」が新設されましたが、ご自身の環境などで変わったことはありますか?
堀合氏:実務自体に大きな変更はありませんが、改めて『FGO』という作品に携わっているという意識が強くなり、気が引き締まりました。
他にも、直接『FGO』の業務とは関係ありませんが、スタジオ制になってから「スタジオをより良くしていくためには?」というミーティングの場が生まれ、小さなことでは「忙しい業務の合間に一息つけるように3時におやつを提供する」「インフルエンザ予防のため、マスクを提供する」といった職場環境の充実・改善について、スタジオ長の石倉たちと話し合ったりしています。
——堀合さん自身、3年ほどディライトワークスに務めてみて、社内の雰囲気はいかがですか?
堀合氏:「みんなゲームが好きなんだな」ということを強く感じます。就業後に社内のボードゲームカフェで遊んだりすることもありますし、すごく居心地がいいです。また、そういったコミュニケーションの場があることで新人の方でも輪のなかに入りやすくなっていると思います。
——この記事はディライトワークスへの就職を目指す人も読んでいると思います。最後に、堀合さんはどのような人と一緒に働きたいかお聞かせください。
堀合氏:「FGOスタジオ」としては、『FGO』という作品について、なにかしらの目標がある方と一緒に働きたいと思っています。「TYPE-MOONさんの作品や『Fate』シリーズが好きで、更に『FGO』を多くの人に届けたい」とか「『FGO』の開発現場から学びたい」という方がいれば大歓迎です。
もちろん「FGOスタジオ」だけでなくディライトワークス全体としても、まだまだやらなくてはならないこと、実現したいことはたくさんあるので、いっしょに夢を実現する仲間はたくさん欲しいです。ぜひ興味のある方はディライトワークスの門を叩いてみてください。
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