普段聞けない「革」の話をたっぷり聞けたぞ。
浅草にある「世界で1つ」のアイテムを求める人が集まる工房、「松下庵」。
そこでは職人の松下 隆さんが、既製品では満足できないお客様のオーダーを募り、牛革やクロコダイル、ヘビ革などで、高級腕時計のストラップやカバンを日々生み出しています。
そんな松下さん手がけるレザークラフトチーム「Go-One(剛腕)」と、ガジェットファッションブランド「Gizmobies(ギズモビーズ)」がコラボレーションしてApple Watchのレザーストラップを作る。ということで、お話を聞きに行ってきました。
唯一無二の高級時計ストラップを作り続けた職人が、どんなApple Watchストラップを作るのか?そこには松下さんならではのこだわり、革に対する熱い想いがありました。
コチラから予約できます
→Apple Watchが欲しくなる。一本一本職人手作りの本革ベルト『Gizmobies Strap』
皮は牛1頭ごと買う
職人が手作りするApple Watchレザーベルト、『Gizmobies Strap(ギズモビーズストラップ)』は誠意制作中。原型を見せてもらいながら、材料の話、皮の加工の話を聞かせて頂きました。
語り手:松下 隆さん(右)
聞き手:KEN360、fan
▽牛1匹の革。ここからGizmobies Strapが作られる。
今回使った革って、すべて売ってないモノなんですよ。このためにプリントしています。
これ全部そうなんです。
牛革なんですけど、ワニのように押しているんですね。牛1匹なんですよ。
KEN:
なるほど。これが元の材料なんですね。初めて見ました。
(これは)どっちかというと小型の牛ですけど。
僕ら職人は皮を1匹まるごと買うんですよ。
▽クロコ押しした牛革。Gizmobies Strapの材料になる。
この迷彩柄とか、デニム柄とかもそうです。これ、革なんですよ。
▽Gizmobies Strapの原型。
もともとボク、スイスの高級時計のストラップを作っているのですが、スイスの高級ウォッチ界隈ではデニム柄のバンドが流行っているんです。
そもそもGパンで作ってもいいんですけど、やはり革のほうが高級なんで。手触りはデニムなんですけど、これ革なんですよ。
▽ベルトの台座部分。これによりボリュームと存在感が出る。
これをですね。裏材料を切って、さらに皮の中に中材料っていうのを入れます。
fan:
え?もしかして3層構造ですか?
そうです。3層構造なんです。
fan:
とっても手が込んでいますね。裏表を張り合わせただけの2層構造が一般的なのに。
▽中材料入りの素材。手間が掛かるが、その分丈夫になり壊れにくくなる。
ベルトでもなんでも、中に材料を仕込んでいるんですよ。じゃないと、壊れちゃったり、痛んじゃったりする。
1つ1つ、手を抜いていないんですよ。
中国の安いものって、中材が無かったりするんですよね。なので壊れやすい。
あ、奥で詳しく説明しますよ。どうぞ。
〜松下さんの案内で加工場へ〜
(皮の)中に入れるものなに?っていうと、これも皮なんですよ。
床革(とこがわ)って言うんですけど。その皮を使うんです。
加工前の皮は厚いんですけど、削って薄くしているんです。そこで余ったのがコレ。いらない人にはゴミなんですけど、ボクら職人は使うんです。
▽測りながら、長年の勘も使いつつ削っていく。
自分でミリ数を計算しながら削っています。
削ってるときは感覚ですけど、やっていくうち慣れるんで。
仕込みをしっかりできるのが「職人」
よく「職人」って言いますけど、組み立てるだけならだれでも出来るんですね。
1週間くらい工場にいて、組み立てをやれば出来るようになるんです。
1番大切なのは「仕込み」なんです。中のパーツを作るまでが職人なんです。組むのはだれでも出来るんですよ。
KEN:
なるほどなるほど。
これワニの背中なんですけど、ガッチガチです。こんなの加工できる職人は今はいないんです。
この背中はディスクグラインダで加工します。
ガルーシャ(アカエイ)も同じように加工するんですよ。
KEN:
ガルーシャの原型を初めて見ました・・・。
削って削って加工したものがこれなんです。(写真右)
やっぱり一般のお客さんが「すごい。いいな!」っていうモノは職人が手を入れたものなんですね。
▽アカエイの皮。ガルーシャ。スターマークと言われる独特な模様が美しい。
▽ガルーシャで作った高級時計のストラップもある。
なんでも手を入れたものはいいんです。
もちろん似たものを何千円とかでも作れるんですけど。ただし、手は抜いちゃいますよね。
だけど、本当に良いものを作ろうとすると、それだけしっかり手を入れてあげないといけない。
クロコダイルってなんでお高いの?
いろんな材料があっても、1番高級なのはクロコダイルです。
これ、クロコダイルのお腹です。
KEN:
おおーーー
fan:
ワニ〜!
▽クロコダイル丸々1匹。
材料屋さんと相談して、これを一匹まるごと買うんです。何十本、何百本と製品を作る際はこっから金型を使ったりします。
ボクはどっちかというと一本ずつオーダーを取る人間なので、型紙を作って革包丁で作ったりします。
▽切れ端でも立派な材料。
fan:
・・・若干ゲスい質問してもいいですか?
はいはい、どうぞ!
fan:
(クロコダイルを指しながら)これでおいくらですか・・・?
あまり知られてないんですが、クロコダイルって長さの取引をしないんですよ。
例えば牛革とか羊とか、バッファローなどの革は、10cm×10cmの四角を「1DS(1デシ)」って読んでいるんですね。デシいくら?みたいな感じで聞きます。
で、牛1匹でしたら、180くらいあるんですよ。デシがたとえば200円でしたら、200×180っていう計算で取引されます。
でも、ワニは違うんです。
fan:
ふむふむ。
ワニはですよ、ビックリしちゃうんですけど全体の長さは一切関係ないです。
この、横腹の長さだけなんです。
一同:
へーーーーーー!
▽横幅が金額を決める。
(腹を指して)要はここが1番高いところなんです。みなさんが有名デパートで見るハンドバッグとかがこの模様の部分で作っています。
fan:
ここの模様が揃っていて、キレイな部分がいかに多いかで決まるんですね。
そうです。で、どうやって買うのかというと、横腹を測って1cmいくらです。
こんな爪のサイズくらいで、、いま一般の方が買いに行くと・・・。1cm、3,500円くらいですね。
一同:
Oh・・・・!!
45cmくらいだと、3,000円×45cmとか、4,000円×45cmとかで、だいたい1匹、十何万円くらいします。
一同:
へぇ・・・。(感嘆)
時計のバンドでしたら、ここから結構な数が取れるので。ただハンドバッグを作ったりトートバックを作ったりすると、作られる数は限られてきますから。
なので、すごく高い。
でもね。ワニって捨てるところが無いんですよ。
変な話ですけどクズでも全部こうやって、ストラップをどんどん作れるんですよ。こういう小さい革でも全部製品にできちゃうんですね。
たとえば、携帯電話のストラップとか細いものとかですね。襟元につけるアクセサリーとか全部作れちゃうんです。
fan:
あ、それこそカフスとかは1cm四方とかでいいですもんね。
そうですそうです。
これボクが作ったクロコダイルのベルトなんですけど。(見せる)
KEN:
超かっこいい。
どんどんどんどん型を抜いて行けば、作れちゃう。
KEN:
あ、編んでますね!
そう、両面で編んでいます。で、裏にはコシを付けるためにヌメ革を当ててあげて、こうやって1個1個組んでいくんです。
そうするとすっごく使いやすくて、伸びるんですよ。
クロコダイルって種類によっても価格が変わるんですけどね。なのでダイヤとか宝石と一緒なんですよね。
上野とか御徒町で売っている「クロコダイルのお財布19,800円!」とかあるじゃないですか。
あれ、クロコダイルじゃないです。カイマンワニです。
KEN:
ワニはワニでも。違うワニなんですね。
そうです。でも、ちゃんと知っている人は、クロコダイルは全然別物だってわかっているんですよ。使っていても全然違います。
革って使っていくと経年劣化で味が出て。いい雰囲気で変わってくるんですけど、それも全然違います。
偽物だと割れてきちゃいますし、本当笑っちゃうくらい違います。
カイマンのワニ使うくらいだったら、変な話、牛革を使ったほうがいいです。
それくらい違いますよ。
皮選びのコツとは?
材料屋さんでキズが無いか、あと「ウロコ」の状態を見ますね。ウロコで健康状態がわかるんですよ。
健康なもの買わないと、のちに剥がれてきちゃったりするので、綺麗じゃないんですよね。
爬虫類って全部そうなんですけど、パッと見た時の美しさっていうんですか。
KEN:
うんうん。(大きく頷く)
ハッと魅せられる美しさっていうんですか?たとえばですよ?いろんな材料をさっきお見せしましたけど・・・。
KEN:
ボク爬虫類大好きなんですよ。
fan:
オマエ目が輝きっぱなしだな。
(爬虫類をゴソゴソ探す)
これはグレージング加工をしています。表面を瑪瑙(めのう)の石で磨くとピカピカになるんですよ。日本受けする加工なんですよね。
で、よーく見るとクロコダイルってポツポツ穴が空いているんですよ。
これは、一応謎なんですけどココで呼吸しているんじゃないか?って言われています。
むしろこういう穴がある方が高級品なんです。
一般の方は、「なんだこれ。キズ付いているじゃないか」って言うんですけど、これが本物です。
▽本物のクロコダイルには皮膚に小さな穴が空いている。
KEN:
本物は穴が空いているんですね。知らなかったです。
ワニの場合はほとんど養殖なんですね。天然は傷だらけなので安く取引されます。
こちらに生に近いワニ皮がありますよ。
▽珍しい、生に近いワニ皮。
「竹斑(たけふ)」っていいまして竹柄のような模様ですね。お腹の周りの丸い部分は玉斑(たまふ)っていうんですけど。
ワニって腹の周りは模様が変わるんですね。どこを使うかってものすごくお客さんの好みが分かれるところで。竹の柄が好みでない方は横の丸で作ってくれとか。
中にはもっとこだわりがある方は「角斑(かくふ)」って細かくて四角い部分を使ってくれってお客様もいます。とっても少ない部分なんですけどね。
6.8mのアナコンダ登場
こんな皮もありますよ。
大蛇です。
一同:
うぉぉぉぉぉおぉ!!!!
KEN360興奮。
KEN:
fanさん、ヘビ苦手なの?
fan:生きていないければイイけど・・・(引きつり笑い)
ヘビ革でトートバッグ作ってくれって依頼が来たんですよ。
爬虫類専門の皮のバイヤーが浅草にいまして。アナコンダが10匹くらいいましたよ。
一同:
どひゃーーー。
大蛇です。ここから玄関先までありますよ。
しかもバックカットっていって、ほら美しい蛇腹でしょ。ウロコがすっごい綺麗。
▽美しいウロコ。これが天然なんです。
KEN:
ボク、ヘビ好きなんですよ。
沖縄ワールドっていう観光地でゴールデンパイソンと写真を撮るコーナーがありまして、2回ほど撮ったことがあります。白蛇様。
fan:
オマエそんな趣味が。
しかもこれ、野生なんですよ。こんなにキズがついてないのってすごいことなんですよ。
KEN:
丸呑みやん・・・。
これはヘタしなくても飲み込まれちゃう。
fan:帰り1人減っているとかw
キズがつかないように捕まえるってありえん。
KEN:
(ヘビ皮を撫でながら)生命力感じますね。
そうですね。これで枕なんか作ったら、毎晩いい夢見られますよ(笑)
一同:
(笑)
▽蛇と記念写真をパチリ。KEN喜びすぎ。
▽とっても長いです。玄関まで届きましたよ。
ボクに依頼来る方って、売っているものがダメなんですよ。
自分のオーダーでカスタムで作って欲しいという方ばかりなので。時計のオーダーもそうですけど、みんなカスタムしてくれ、カスタムしてくれって。
もっと職人は胸を張っていい
このところ見直されてはいると思うんですけど、日本の職人って残念なんですけど、江戸時代からある・・・身分が低い職業というか。
特にココ(浅草)、引っ越してきたばかりなんですけど、職人さんが多いんですね。
なんかね、「表に出ちゃいけない」みたいな感じがすごい。
日本はものすごく、格が下に見られちゃっているんですよ。ボクもちろん仲間いますし、師匠がいるんですけど。誰一人、人前に出るのを嫌がるんですよね。
で、なんで出ないんだ?って聞くと、昔大手さんの下請けで、さんざんいじめられたとかで表に出ないんですよ。
ボク、そういうの大っ嫌いなんで。
だって、外国行くと「先生」って言われるんですよ。
KEN:
うんうんうん。
素晴らしいですね。たった人間の手でね。なんでも作れちゃうから先生だって。
香港に、ヨーロッパ圏で作っている工場があるんですよ。そこの社長さんとか従業員の方と年に1回くらい話をしてるんですけど「これどうやって作るんだ?」っていう技術的な話をするんですね。
たまたま、ご縁があってこのような(取材)の機会を頂いて。ボクは胸張って出てやろうと思って。
KEN:
ありがとうございます!!
全然いいじゃないですか。
おかしいもの作っているんだったらダメですけど、ちゃんとした物作って、ちゃんとした素材で、ちゃんとした仕事をしているんで。
それを恥じることはどこにあるのかなって思うんですよね。
ボクは自分でブランド持っているんで。もう、本当に1匹狼なんですけど。時計のストラップ専門でやってて。まぁ、7年目なんですけどやっとですよ。とりあえず飯食えるようになって。
いままでは全然食えなくて、ペンキ屋のアルバイトしたり。この歳になってそんな生活をしていたんですけど。
それだけ日本てなんか閉鎖的で、なんでもいいものフタしめちゃって。表に出さないとか。
(クロコの皮を眺めながら)この材料とかもそうなんですけど、こういう取引のことなんか一切書いてないですし。なんか、言っちゃいけないみたいな。変な雰囲気なんです。
なにが悪いの?いいじゃないですか。ってボク思うんですけどね。
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本気でものづくりをしている職人、松下さんの熱い想いが聞けました。職人が一つ一つ手作りで作る、Gizmobies Strapが楽しみです。
近々AppBank Storeで、先行予約開始するのでしばしお待ちを!
次回の記事ではApple Watchレザーストラップのこだわりや、職人のワザを見せてもらいます。
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