先日、iPad Retinaディスプレイモデルの販売が再開されました。
iPad Retinaディスプレイモデルは「第4世代 iPad」とも呼ばれており、iPad Air の1世代前のモデルに当たります。
価格は39,800円で、これまで販売されてきた iPad 2 と同じです。iPad シリーズの入門機として位置づけられています。
安さが魅力ですが、他にも iPad Air との違いはあるのでしょうか?
1. デザイン
iPad Retinaディスプレイモデル(以下、iPad Retina モデル)のデザインは、iPad 2・第3世代 iPad とほとんど同じです。
左が iPad Retina モデル、右が第3世代 iPad です。
ただ、これまでの Dock コネクタから「Lightning コネクタ」に変わりました。このコネクタは iPhone 5/5s/5c でも使われています。
上が iPad Retina モデル、下が第3世代 iPad です。
iPad Air と比べると、背面が丸みを帯びていることが分かります。写真は下から iPad Retina モデル・iPad Air・初代 iPad mini です。
色は「ブラック」と「ホワイト」。液晶を囲むベゼルの色が異なります。どちらの色でも背面はシルバーのままです。
(画像:Apple)
一方で iPad Air の色は「スペースグレイ」と「シルバー」です。ベゼルの色が異なるほか、背面の色も異なります。
(画像:Apple)
2. サイズ
上から初代 iPad mini・iPad Air・iPad Retina モデルです。右下の位置を合わせると、iPad Retina モデルの横幅が一番広いことが分かります。
iPad Retina モデルは iPad Air よりも16ミリほど幅が広いのですが、液晶のサイズは全く同じです。
縦は、iPad Retina モデルの方が1ミリほど長くなっています。
厚さを見てましょう。iPad Retina モデルは iPad Air よりも約2ミリ厚くなっています。左が iPad Retina モデル、右が iPad Air です。
3. 重量
iPad Retina モデルの重さは652グラムです(Wi-Fi モデル)。一方で iPad Air は469グラムと、iPad Retina モデルの方が重いです。
缶コーヒーのショート缶が190グラムなので、ほぼ1本分の違いがあると言えます。
4. 処理能力
ベンチマークアプリという、処理能力を計測・数値化するアプリを使い、iPad Retina モデルと iPad Air の処理能力を比べてみました(データは2013年11月のもの)。
やはり iPad Air の方が優れているという結果になりました。
計算能力
GeekBench 3 というアプリで計測したデータを元に、両者を比較します。
結果は以下の通りです。iPad Air は、iPad Retina モデルの2倍ほどの計算能力を持っていることが分かります。
「コア」とは計算を行う部分のことで、両モデルの iPad のプロセッサには2つのコアが搭載されています。「シングル」は1つ、「マルチ」は2つのコアを使った結果になります。
描画能力
特にゲームアプリをプレイする上で重要になるのが「描画能力」です。
ここでは GFXBench の計測データで比較します。
やはり、ここでも iPad Air が優勢です。結果からは、iPad Retina モデルの1.2倍ほどの性能を持っていることが分かります。
データの読み書き速度
ここでは PerformanceTest Mobile で計測したデータを元に比較します。
アプリが利用するスペースでのデータ読み書き速度は iPad Air が iPad Retina モデルの約1.8倍、システムメモリでは約1.4倍という結果でした。
M7コプロセッサ
iPad Air には「M7 コプロセッサ」が搭載されています。これはジャイロスコープ・加速度センサーなどのデータを常時処理する専用プロセッサです。
iPhone 5s では、歩数計に使われています。
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5. ディスプレイ
ディスプレイの大きさは、どちらも「9.7インチ」です。しかし、iPad Air の方が大きく感じられる場合があります。
iPad Air は、ディスプレイを囲むベゼルが細いからです。左が iPad Air、右が iPad Retina モデルです。
6. Wi-Fiの最大通信速度
iPad Air は「MIMO」に対応していますが、iPad Retina モデルは対応していません。
MIMO は複数のアンテナを使い、Wi-Fi の通信速度を向上させる技術です。
これでWi-Fiが速くなる?iPad Airで採用された「MIMO」とは。
この技術により、iPad Air の最大通信速度は iPad Retina モデルの2倍になります。ただし、性能を引き出すには対応する Wi-Fi アクセスポイントも必要です。
7. 容量・価格
iPad Retina モデルは 16GB のみですが、iPad Air の 16GB モデルと比べて1万円以上安い価格になっています。
iPad Retinaモデル | iPad Air | |
---|---|---|
容量 | 16GB | 16GB 32GB 64GB 128GB |
価格 | 39,800円 | 16GB:51,800円 32GB:6,1800円 64GB:71,800円 128GB:81,800円 |
バッテリー稼働時間は同じ
Apple によると、iPad Retina モデル・iPad Air ともにビデオ/オーディオ再生・Wi-Fi でのネット利用で最大10時間です。
ただし、iPad の使い方・設定次第でバッテリー稼働時間は延びます。逆に10時間よりも短くなる場合もあります。
iOS・使える機能は?
デザインが大幅に変わった iOS 7 は、iPad Retina モデルでも利用できます。機能も iPad Air とほとんど同じです。
違いがあるとすれば「M7 コプロセッサ」と「64ビットプロセッサ」によるものです。
M7 コプロセッサは先述の通り、加速度センサーなどを使って iPad の動きをデータ化するためのプロセッサです。ただし、iPad では対応アプリは多くありません。
iPad Air のプロセッサは64ビット対応です。64ビットは、そのプロセッサで1度に扱えるデータの量を表しています。そのため、iPad Air の方がより多くのデータを迅速に処理できます。
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この特徴を活かし、さらに複雑な処理を行う機能を追加しているアプリもあります。こうした機能を使う・快適に利用するには、iPad Air が必要です。
iPad Retinaモデルは「買い」か
例えば「ウェブ検索」「メール送受信」「動画視聴」といった使い方であれば、iPad Retina モデルでも十分に役目を果たすでしょう。
こうした使い方であっても、 iPad Air の方が快適なのは事実ですが、その分だけ購入に必要な費用も高くなります。
したがって、iPad Air よりも処理能力が低い・大きい・重いという欠点を「価格」でカバーできる使い方をするか否かが重要と考えられます。
もしカバーできる使い方であれば iPad Retina モデルが、そうでなければ iPad Air がピッタリの iPad になるはずです。