後からピントを調整できる写真が撮れるカメラは「Lytro」が有名ですが、Apple はこのカメラと同じ機能を iPhone に盛り込むかもしれません。
AppleInsider によると、Apple が関連する特許をアメリカで取得しました。
その仕組みは既に販売されている Lytro と同じですが、撮影した写真の解像度が低くなってしまうことから通常の撮影モードと切り替えられるのが特徴です。
なぜ「後からピント合わせ」ができるのか?
デジタルカメラはフィルムの代わりに CMOS や CCD センサーで被写体から発せられる光の情報をデジタル化。これを元に画像ファイルを作成します。
通常のデジカメではそのセンサーの前にレンズを配置します。
一方で後からピント合わせができる写真を撮影できる「ライトフィールドカメラ」は複数のレンズを並べた「レンズアレイ」を配置します。
この構造の違いにより、通常のデジカメでは1パターンしか記録できない光の向き・明るさ・色を、ライトフィールドカメラは1度に複数のパターンを記録できます。
例えば A にピントを合わせた写真を撮る場合、通常のデジカメでは A にピントを合わせた状態での光の向き・明るさ・色の情報のみを記録します。
A の後ろに B がいても、その B にピントを合わせていないので B にピントを合わせた時の情報は記録されておらず、後からピントを合わせることが出来ません。
ライトフィールドカメラなら1回の撮影で A にピントを合わせた時の情報も、B にピントを合わせた時の情報も記録されます。写る範囲内の情報はすべて記録します。
こうして記録された情報は専用のソフトで処理され、撮影後に好きな場所にピントを合わせられる状態になります。
既に販売されている Lytro では、撮影した写真をウェブブラウザからピント調整できる状態で公開できます。以下はそのサンプルです。
Appleが取得した特許とは
Apple が取得した特許は、ライトフィールドカメラの仕組みそのものではありません。
ライトフィールドカメラは大量の情報を1度に記録できますが、1つ1つの情報を記録する際に使うセンサーの範囲が狭くなるので写真の解像度は低くなります。
そのため、後からピント合わせをする必要がない写真を撮る場合、現在のライトフィールドカメラは少々使いにくいと言えます。
そこで Apple はレンズを切り替えられる仕組みを考案しました。以下のイラストは Apple が特許を申請する際に提出したものです。
ここではライトフィールドカメラに使うレンズアレイがセンサーの前に配置されており、その下に通常のレンズがあります。
(画像引用元:USPTO)
後からピント合わせができないものの、高解像度の写真を撮りたい場合にはレンズアレイを移動させて通常のレンズに切り替えます。
(画像引用元:USPTO)
なお、今回の特許を Apple が申請・取得したことは間違いありませんが、その中身が製品に活かされるとは限りません。
現状ではライトフィールドカメラの高解像度化が実現できるのか、レンズを切り替えられるメカニズムを小型のカメラユニットに収められるのか、といった課題もあります。
さらにライトフィールドカメラの原理を用いなくても、似た機能は実現できそうです。
例えば、様々な場所にピントを合わせた写真を連続撮影してアプリで処理。後からタップでピントを調整できるようにするといったものです。
参考(順不同)
- Apple patents Lytro-like refocusable camera suitable for iPhone – AppleInsider
- Lytro – Home
- United States Patent: 8593564 – USPTO
- ライトフィールドカメラ Lytro の動作原理とアルゴリズム – 京都産業大学(PDF)