2012年7月にリリースされてから1年以上遊ばれ続けているアプリ「冒険者ギルド物語」をご存知ですか。
リリースから1年以上経った今でも遊ばれているアプリで、リリースから2013年の6月までに2500万回もアプリが起動されています。AppBank Networkが独自に集計してランク付けをしている「最も使われている無料アプリランキング」にも今でも継続してランクインしています。
「冒険者ギルド物語」をダウンロードしてプレイするとわかるのですが、ゲームでは1番の差別化となるグラフィック面でもあまり特徴がありません。外面的な特徴がないゲームアプリでも、ダウンロードされて遊び続けてもらえている理由はどこにあるのか。開発者のMIYAMOTOさんに話を伺ってきました。
インタビューは、アプリに広告をご提供し、収益化のお手伝いをする「AppBank Network」の運営を担当しているAppBankのしょーざが担当しました。それではインタビューをどうぞ!
(アプリはこちらからどうぞ:冒険者ギルド物語 for iPhone: 冒険者ギルド育成ゲーム!彼らの運命は彼らのみぞ知る…。)
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見た目ではなく内容で勝負!
– 何に時間をかけて開発をしていますか。
Miyamoto Hirotaka:今はゲームのシステムやシナリオといった、アプリの内容に時間をかけています。「冒険者ギルド物語2」はシリーズ2本目になっても外見はほとんど変わっていないので、外から見ると何が変わったのか謎かもしれません。開発コンセプトとしてAppleから提供されるデフォルトのユーザーインターフェイスだけでゲームを作ってみよう、というこだわりがありました。「基本UIだけでもこのくらい遊べるアプリは作れる」ということに挑戦してみたかったのです。
– 外見がほとんど変わっていないということであれば、既に使っているユーザーがいる冒険者ギルドのバージョンアップとして内容を増やすこともできたのではないでしょうか。
アップデートで大幅な仕様の変更をしたので、ユーザーも困惑しないように別アプリとしてリリースしました。また、新しい試みなどを盛り込むためには、一度仕切りなおしをした方が丁度よいというのもあります。アップデートだけで、アプリを進化させ続けるのは難しいので。あと、アプリ内でのシナリオが一区切りついており、時代背景が変わるから、というのも大きいです。冒険者ギルド物語のストーリーには、現在・過去・未来と区切りがあるので、アプリも3つに区切る予定です。アップデートを繰り返してアプリをいじり続けてしまうと、良くなったものもまた悪くなる可能性があるので、ある程度安定したら次へ、と思っていました。
– 開発コンセプトが「基本UIだけでもこのくらい遊べるアプリ」ということですが、基本UIを利用すると、世界観などが作りにくく、安っぽく見えてしまうことが多いと思うのですがその点についてはどう思いますか。
そのとおりだと思います。デメリットはありますね。基本UIを使う1番のメリットは作業量の少なさです。個人開発、ということもあり、この点が重要だと思っています。デザイン面のデメリットは、壁紙一枚で印象を変えるという小作業で、多少カバーしています。あとは読み物のようなアプリですから派手なデザインよりもシンプルで見やすい形にするように心がけています。
– あえて基本UIだけでアプリを作ると縛ったのには理由はありますか。
「誰でも作れる」ことにこだわったところはあります。ゲーム業界ではグラフィック面はどんどんと進化していますが、ゲームの面白さはそこだけではないはずだ、という思いがありました。なので、個人でゲームアプリを作る際に、グラフィック技術はなくてもおもしろいアプリは個人でも作れるんじゃないか、というこだわりからですね。どこかグラフィックにこだわりがないとゲーム業界に入れないといった印象をアプリ業界に感じたので、グラフィック技術のない個人でも大丈夫と言うためのあえてだったと思います。他の開発者へ向けてのメッセージ性も少し含んでいます。
– グラフィックでの差別化を行わなかった理由はそこだということですか。
そうですね。最初から割り切っておけば、その後も開発時間をかけずに済むので作りやすいです。個人開発において、負担が大きいほど、開発も遅れるし、結果として品質の低下にもつながるので、作業量というのはかなり重要です。
– グラフィックを差別化していないのに、ユーザーさんから支持され遊び続けてもらえている理由はどこにあると思いますか。
実際、遊び続けてもらえているので、ユーザーが求めているものはグラフィックでの差別化だけでは無い、ということだと思います。とにかくダウンロードしてもらう、そして第一印象を良くするためにはグラフィックの差別化は重要だと思います。しかしそれが必要なのは入口であって、遊び続けてもらうための必須項目ではないのかもしれません。「冒険者ギルド物語」は、カジュアル・ゲームが流行っている中、真逆に向かっているアプリかと思っています。長続きするアプリを作る、というコンセプト自体が古い考えなのかもしれませんが、その希少価値ゆえに支持されているのかもしれません(笑)
– グラフィックで差別化されていないと、ダウンロード数が伸びにくいと思うのですが実際どうですか。
そう思います(笑)。ただ、長期的に改良していくつもりだったので、最初から高いダウンロード数は見込んでいなかったです。
– 大体リリース時に1番ダウンロード数が増えるので、初めにどれだけダウンロード数が増やせるかが重要なのではないかと思っていました。
それは重要だと思います。ただ、ある程度ユーザー数がいれば、フィードバックをとりながら継続(アップデート)が可能です。100人で作って100の利益を出すことより、1人で作って2の利益を出せれば十分だと思っています。その分、作業時間含む開発コストが少なければ成り立ちます。グラフィック軽減も作業時間を少なくするためです。
– 継続していくにしても辞めていくユーザーもいるので、新規ユーザーは継続して増やしていかないと収益的には厳しいと思うのですが。
そう思います。だから辞めていくユーザー数が少ないアプリを目指しています。多くのアプリは最初にダウンロードされた後、急速にユーザーが消えていくと思います。その中でユーザーが遊び続けているアプリというだけで、知名度がつき、徐々に人気を獲得していける市場だと思います。だから、開発コスト軽減、継続をコンセプトに、やり続けてさえいればいいという開発が成り立つのだと思います。割とニッチな、時代の流れに逆らったアプリだと思ってます。
– 長く利用してもらうためにどのような工夫をしていますか。
やはりユーザー視点で考えることではないでしょうか。「冒険者ギルド物語」のユーザーに、グラフィックの強化とゲーム内容の強化のどちらに開発時間を使って欲しいか、と聞いたらおそらくゲーム内容を選ぶのではないかと思っています。このアプリにグラフィック面を求めていないだけかもしれませんが…(笑)。ユーザーが求めていそうな事柄をひたすら実装し続けてきた。やってきたことはそれだけかもしれません。
– ユーザーさんからの要望はどのようにして取り入れていますか。
「冒険者ギルド物語」はアップデートにて改良を重ねて行くアプリなので、レビューやTwitterの反応を参考にしています。サポートに直接要望を伝えてくれるユーザーの方もおり、ユーザーと一緒に作っているようなゲームアプリになっています。
ユーザー視点で考える
– 冒険者ギルド物語が初めてリリースされたアプリかと思うのですが、初めてリリースするアプリでヒットできた要因はどこにあったと思いますか。
いえ、簡単なアプリでしたら冒険者ギルド物語をリリースする前に10本以上作っています。一番売れたのは「トレンドなう!」というアプリでした。様々なジャンルのアプリを作ってみましたがどれもダウンロードされるのが短期間なので、ロングセラーを出すにはどうすれば良いかとずっと考えていました。『冒険者ギルド物語』がヒットしたのはそのような下地があったからだと思います。
– そうだったのですか。App Storeには3つだけしかアプリがりリリースされていませんが、どうして過去にリリースしたアプリを公開していないのでしょうか。
公開を終了した理由としては、アップデート対応が大変なことやTwitterの仕様変更という点です。やはり多数のアプリをアップデート対応して売り続けることは難しいです。アプリの寿命のようなものでしょうか。私が基本UIにこだわるようになったのは、そういった仕様変更に耐えられるからです。オリジナル要素を増やすと、予期せぬ仕様変更に対応できないこと可能性が高くなるので。
– 過去にリリースされていたアプリが短期間しかダウンロードされないという問題から脱せたのが「冒険者ギルド物語」ということですが、ロングセラーを出すためにされた工夫など教えてください。
AppBankさんに載せてもらう事(笑)。それは冗談です。事実重要ですが、やっぱり、先ほど申したようにユーザー視点で考えることでしょうか。
– これまでリリースされたアプリでは、ユーザー視点が考えられていなかったというわけではないですよね。
実は、過去に作ってきたものは有料アプリが多く、本格的な有料アプリは「冒険者ギルド物語」が初めてです。実際、有料アプリと無料アプリの違いは大きいと思います。有料アプリの場合リリースした時点で、ある意味「完成」している必要があります。そのため、後から完成させるという発想は持ちにくいのです。
– 新しいアプリをリリースするよりもアップデートを繰り返すことを重視していると思いますが、新しいアプリをリリースしていくということはあまり考えていないのでしょうか。
作りたいとは思っていますが手間の問題が大きいです。今のアプリに時間を多く費やしています。
– なるほど。開発期間のほとんどをゲームシステムやシナリオ作りに使っていると思いますが、特に時間を費やすのはどの部分でしょうか。
ゲームのシナリオに時間がかかってます。慣れていないからというのもありますが、文章を書くのに時間がかかります。冒険者ギルド物語では、ストーリーと冒険の描写と冒険で手に入れる手記(メモ)があるので、わりと文章の多いアプリです。
– かなりやりこみ要素のあるゲームだと感じていたので、一番難しいのはゲームバランスの調整かと思っていました。
慣れの問題もあるかもしれません。計算には慣れているけれど文章には慣れていないので時間がかかっているのだと思います。ゲームバランスの調整に比較的時間がかかっていないのは、開発が一人だからというメリットがあると思います。全ての情報を自分ひとりの頭の中で調整できるので、他スタッフとのやり取りが必要ないためです。これを分担作業で開発する場合は大変だと思います。
1ダウンロードあたりの「利用率」を高めることで収益化できる
– アプリの収益源を教えてください。
AppBank Networkの広告収入と内部アドオンがアプリの収入源です。
– ダウンロード数が多いわけではないと仰られていましたが、最も使われている無料アプリランキングに何度もランクインしているところを見ると1ダウンロード辺りの収益率が高いのではないかと思います。何か広告収益を最大化する為に行っている事はありますか。
アプリの宣伝は特に行っていません。AppBankの「最も使われている無料アプリランキング」に載せていただいているだけです。その他だとアプリからツイートできる機能をつけているくらいです。このアプリの特徴は1ダウンロードあたりの「利用率」だと思います。やり続けるユーザーが多ければ、収益率につながるのではないかと。このアプリのスタンスのままだと思います。
– 長く使ってもらうことがイコール収益の最大化になっているということですか。
はい。
今後も長く遊べるゲームアプリを目指す
– AppBank Networkは10点評価で何点になりますか。またその理由を教えてください。
AppBank Networkの一番の魅力は「最も使われている無料アプリランキング」ではないでしょうか。その「宣伝力」と、そしてDL数ではなくバナー表示回数を見てくれる「他には無い特異性」に10点満点を評価したいと思います。
何十万、何百万ダウンロード突破!などの数字が飛び交うアプリ業界ですが、「冒険者ギルド物語2」は2万ダウンロードもありません。それでもユーザーの継続利用率の高さと一人あたり一日平均8回程度起動されているためか、AppBank Networkのランキングに載せ続けてくれています。AppBank Networkは大きな宣伝力を持たない個人でも、ちゃんと使われ続けているアプリであればランキングに載せてくれます。
– MIYAMOTO様のアプリを利用しているユーザーへ一言お願いします。
冒険者ギルド物語はユーザーの皆様の声を参考に改良を続けています。特にユーザーサポートへ頂いたご意見は何よりも重視しています。これまでにもサポートへメールで意見を送ってくれた方、協力してくれる方々の存在は開発の励ましにもなり、本当に感謝しています。丁寧な対応を仕切れず寂しい返事も多いかもしれませんが、直接のご意見を頂けることは何よりも嬉しく思っています。これからもより良いアプリを提供していきたいと思いますのでどうぞよろしくお願い致します。
– ご自身のアプリの自慢を一つして下さい!
「冒険者ギルド物語」でユーザーの皆様と一緒に遊びながら作るようなゲームアプリ開発を行っています。ニッチ市場ですが長く遊べるゲームアプリを目指して細々と続けています。不備も多くまだまだ未熟な点も多いですが、これから遊んでくれる人が居るならよろしくお願いします。
開発者情報
開発者名:
Miyamoto Hirotaka
最もダウンロードされたアプリ:
トレンドなう!
リリースしている総アプリ数:
現在3本(過去15本)
開発体制:
一人
平均開発期間(アイディアの着想からリリースまで):
簡単なアプリなら一ヶ月程度。
『冒険者ギルド物語』のような長期利用するアプリは、アップデートによる改良を一ヶ月に一度程度行っています。
開発に利用しているツールやソフトウェア:
Xcode
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過去のインタビュー
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・開発: HIROTAKA MIYAMOTO ・掲載時の価格: 無料 ・カテゴリ: ゲーム ・容量: 8.6 MB ・バージョン: 3.36 |