新しい iPad を買う上で気になるのが、既に手元にある iPhone といかに共存させるか。
iPad は一見すると iPhone をただ大きく引き伸ばしただけで、その性能は iPhone とさほど変わらないように思えます。単に物欲のままに購入するのも良いかもしれませんが、やはり買う前には iPad と iPhone との使い分けは決めておきたいところです。
iPhone と iPad の使い分けを考えないままでは、決して安くはない iPad を買っても iPhone だけで十分だった、という最悪の事態も想定されます。
そこで今回は iPhone と iPad を比較して両者の特徴を考えて、その上で iPhone と iPad の使い分け、そして両者を共存、活用する方法について考えてみます。
iPhone と iPad を比べる
今回は iPhone 4S と新しい iPad 、いわゆる第三世代 iPad の Wi-Fi 版を比較します。
項目 | iPhone 4S | 新しい iPad |
サイズ(ミリ) | 115.2×58.6×9.3 | 241.2×185.7×9.4 |
重さ(グラム) | 140 | 652 |
ディスプレイ | 3.5インチ(960×480px IPS) | 9.7インチ(2048×1536px・IPS) |
ピクセル密度(ppi) | 326 | 264 |
プロセッサ | A5(デュアルコア CPU(800Mhz)/GPU) | A5X(デュアルコア CPU(1Ghz)/クアッドコア GPU) |
メインメモリ | 512MB | 1GB |
Wi-Fi | 802.11a/b/g/n | |
Bluetooth | Bluetooth 4.0 | |
カメラ | 前:30万画素・後:800万画素 | 前:30万画素・後:500万画素 |
撮影可能な動画サイズ | 1080p HD | |
AirPlay ミラーリング | 最大 720p | 最大 1080p |
連続インターネット利用時間(Wi-Fi) | 最大9時間 | 最大10時間 |
容量 | 16GB/32GB/64GB |
iPhone と iPad で大きく異なっているのは以下の項目です。
- サイズ
- 重さ
- ディスプレイ
- プロセッサ
サイズ・重さ
iPad 表面(フレームと液晶ディスプレイ)の大きさは iPhone 4S 6台分に相当します。その一方で厚みは0.1ミリしか違いません。
よって、持ち運びやすさという点では iPhone が勝ります。ただ、iPad はカバンに入れることによってその持ち運びにくさは多少緩和されます。
持ち運びやすさという点では重さも重要です。当然 iPhone は iPad よりも軽いです。iPad との比較で表現すれば4分の1の重さです。
ディスプレイ
どちらのディスプレイにも IPS 液晶と呼ばれるパネルが採用されています。この種類の液晶パネルは視野角(液晶が見える角度)が広く、発色が美しいのが特徴です。
一方、1画面のピクセル数で表示できる情報量が決めるとすれば、iPad の液晶は iPhone のそれに比べておよそ7倍もの情報を表示することができます。
また、単純にディスプレイのサイズを比較すると、 iPhone が3.5インチであるのに対し、iPad は9.7インチと大きいのです。それだけでも iPhone より一度に表示できる情報が多い事が分かります。
プロセッサ
iPhone 4S と新しい iPad(第三世代 iPad)のプロセッサにも違いがあります。
プロセッサとは画面を表示したり、様々な結果を出すために計算を行うパーツのこと。ここの性能がいかほどかによって、そのデバイス全体のおおよその性能が分かります。
昨今の iPhone/iPad に搭載されているものは A5(A5X)プロセッサと呼ばれています。そして、その中には単に計算を行う CPU と映像や画像の表示のためだけの計算を行う GPU があります。
iPhone 4S と新しい iPad(第三世代 iPad)を分け隔てるのは、この GPU です。
新しい iPad ではディスプレイ解像度を従来の4倍にしたことで、より強力なグラフィック処理能力が必要となり、A5 プロセッサの GPU をパワーアップさせました。その結果、誕生したのが A5X プロセッサです。
この差異は、iPhone がモデルチェンジを行えば埋められる可能性が残っています。しかし、Apple は iPhone にはそのバッテリ消費を抑えるために iPad よりも若干性能の低いプロセッサを採用する傾向があります。iPhone 4S と iPad 2 の関係がそれです。
よって、この違いはモデルチェンジを行っても固定化する可能性が高く、サイズや重さといった要素の差異であると言っても差し支えはなさそうです。
メインメモリ
メインメモリの容量にも iPhone 4S と新しい iPad では2倍もの違いがあります。これも新しい iPad が先の理由により、処理能力を向上させる必要があったからです。
なぜメインメモリが多い方が良いかというと、それが机の大きさだと考えてください。
机が大きければ大きいほど色々な作業を並行して行えます。大きな机を必要とする仕事も(その効率性はともかく)こなすことができます。
一方で小さな机しかなければ、大きな机を必要とする仕事はできません。また、できたとしても小分けにして作業しなければならないので効率が悪いのです。
このメモリの差異もプロセッサ同様、iPhone のモデルチェンジによって消滅する可能性があります。こちらについてはプロセッサとは異なり、容量を増やしてもバッテリ消耗が倍増するようなことはないので、将来的にこの差異は消滅する可能性が大です。
各要素から考えられる iPhone と iPad のすみ分け
これまでご紹介した、iPhone と iPad のスペックの違いから何が分かるのでしょうか。それは利用シーンや用途の違いです。
iPhone は片手で立ったままでも利用できますが、iPad は難しいです。逆に言えば、iPad はじっくりと腰を据えられたり、机がある場所で使うのが理想的ということです。
次にディスプレイの違いです。iPad は大きく、ピクセル数も多い。一方で iPhone は iPad に比べて小さく、ピクセル数が少ないことは先に述べた通りです。
iPhone は一度に表示できる情報量が少なく、縦に長いウェブページであれば何度もスクロールしなければなりません。
一方で iPad は一度に表示できる情報量が多い。そのため、Twitter のタイムラインをチェックするように、たくさんの情報を一度にチェックしたい場合、あるいは絵を描いたり本を読んだりといった、広い作業領域が必要な時に iPad は最適です。
また、プロセッサの違いという点では、iPhone 4S よりも新しい iPad(第三世代 iPad)の方が勝っています。
この違いから考えられるのは、最高の処理能力を必要とする高解像度写真の編集・サイズの大きなファイルを扱う作業には iPad が適しており、それ以外については iPhone と何ら変わらないということです。
iPhone は「さくっ」と使う・iPad は「じっくり」と使う
さて、これまでにご紹介したスペックの差異を見てみると iPhone と iPad では利用シーンや用途に大きな違いがあることが分かります。
iPhone はちょっとした空き時間・隙間時間に使うのに適しています。そのサイズと重さからどんな状況でも片手が空いていれば使うことができます。
よって、利用シーンとして考えられるのは通勤・通学などの外出時です。
iPad は腰を据えてアプリを使いたい時に適しています。特に高解像度の写真を編集したり、GarageBand を使って作曲したりといった、iPhone では力不足に思える作業を行うのにもピッタリです。
また、そのディスプレイの大きさからウェブ検索を行ったり、辞書で調べものをする時にもピッタリです。
そのことから利用シーンとして考えられるのは、自宅や勤務先・宿泊先です。
上記から分かるのは、それぞれが苦手とするところを互いに補い合っているということ。ですから iPhone ユーザーにこそ iPad が必要と言っても過言ではないでしょう。
iPhone と iPad を共存させるための方法
しかし、いくら iPhone と iPad が使い分けられるといっても、実際に利用する場面に即して工夫をしなければうまく使い分けることはできません。
例えば、連絡先やカレンダーなどが iPhone と iPad でバラバラだと不便きわまりないです。これはインストールされているアプリにも言えることでしょう。
そこで重要な役割を占めるのが iCloud とユニバーサルアプリです。
iCloud
iCloud はご存知の通り、連絡先/カレンダー/ブックマーク/リマインダー/メモを同期するだけでなく、フォトストリームを使うことで iPhone で撮影した写真を iTunes との同期なしで iPad でも閲覧できたり、その逆も可能にします。
また、Pages/Numbers/Keynote のような Documents in the Cloud 対応アプリであれば、iPhone で作成中だった書類を iTunes との同期なしに iPad で編集できます。
加えて iMessage を使えば、外出先では iPhone で受信・返信していたメッセージを、帰宅後は iPad で受信・返信することもできます。
iCloud に関する、詳しい情報は以下の記事をご覧ください。
iCloud を使い始めよう!設定、同期、ブラウザからアクセスなどなど、基本を解説します。
iCloud解説。概要、主な機能、設定方法、価格など。
ユニバーサルアプリ
次にユニバーサルアプリですが、これは iPhone と iPad の両方で利用できるアプリのこと。1つのアプリを購入・ダウンロードするだけで両方で利用できます。
よって、ウェブサービスにログインするタイプのものであればアカウントが使い回せます。また、アプリの操作方法がほぼ同じなので違和感なく使えます。さらに、同じアプリなのでデータのやり取りも簡単です。
例えば、以下の記事でご紹介している Twitter クライアントアプリは、未読/既読を iCloud を使って同期します。よって、iPhone で読んだツイートを iPad でもう1度読むという無駄を避けられます。
TwitRocker2 for iPhone: 世界初?iCloud によるタイムライン同期が可能なTwitterクライアント!
iCloud に付随する「アプリの自動ダウンロード」機能を利用すれば、iPhone で購入したアプリが iPad にも自動でダウンロード・インストールされます。わざわざ同じアプリをダウンロードし直す手間が減ります。再課金は行われません。
【iCloud】購入したアプリ・ブックの自動ダウンロード、再ダウンロード、同期の解説。
こういったサービスや機能を利用することで、iPhone と iPad を共存させ、なおかつそれぞれに保存されているデータをまったく同じ状態に保ち、快適に利用できます。
現時点での課題
一方で、iPhone と iPad の共存においては解決されていない課題もあります。
ユーザー辞書の同期
第一にユーザー辞書が iCloud で同期されないことです。そのため、iPhone でユーザー辞書に単語を登録したら、iPad にも同じように単語を登録しなければなりません。
また、漢字変換の学習結果も iCloud では同期されていないようなので、厳密な意味で iPhone と iPad を同じ環境に保ち続けることができません。
ユニバーサルアプリの有無
第二にユニバーサルアプリではないアプリで iPhone 版しか存在しない場合、iPad でそれを快適に利用することが難しいことが挙げられます。
基本的にアプリ開発者が iPhone 以外のデバイスでの利用を制限していない限り、iPad でもそのアプリを利用することは可能です。
しかし、2倍に拡大して表示するため、ユーザーインターフェイスやアプリで表示する画像が荒くなったり、スムーズに操作することができない場合があります。
この問題ばかりは、そのアプリの開発者が iPad 版を開発したり、ユニバーサルアプリ化を行わない限り解決できません。
iPhone ユーザーにこそ iPad を使って欲しい
以上から言えるのは iPhone がないと困るくらいに活用している方にとってこそ、iPad は重要なデバイスになり得るということです。
というのも iPad には大きな画面と強力な処理能力という利点があるからです。この iPad の利点は、iPhone で色々な作業をしている人にこそ効果的で魅力的と言えるでしょう。
ただ、そこには1つの前提条件があります。それはいつも使っているアプリが iPad でも利用できるユニバーサルアプリであったり、iPad 版アプリがあるという条件です。
なぜなら iPhone と iPad は基本的に出来ることに違いはありませんが、iPad でも使えるアプリがなければ iPhone で出来たことは実現できないからです。
その条件を満たせない場合は、「iPhone と 共存させて使う」という使い方をしたい方にとっては、 iPad の魅力は半減します。もちろん iPad には他にも楽しみ方はたくさんあります。それについては今後、iPadの楽しみ方について色んな記事を書きますので、そちらをご覧下さい。
この前提条件を満たす環境であれば、iPad を使わない理由はありません。きっと今までとはまったく違う、新しい生活が始まるはずです。