808、909…といえば、音楽関係者ならおなじみだろう。80年代にローランドから発売され一世を風靡したリズムマシン、TRシリーズのことだ。デビュー当時はYMOなどのテクノポップアーティストが愛用し、後年になってPCM音源ではない独特のドラム・パーカッション音がR&Bやテクノ界隈で再評価されている名機である。そのTRシリーズをiPhone上で再現するアプリが、このIR-909だ。
サンプルパック(ドラムセット)は6種類。TRシリーズの金字塔「やおや」ことTR-808を始め、「ドラマティックス」こと606、909、707、加えてテクノテイストなオリジナルセットが2種類用意されている。各サンプルパックごとに4種類のパターン(P1〜4)をプログラムし演奏可能だ。
画面の中央にはBD(バスドラム)・SD(スネアドラム)・CP(ハンドクラップ)などの各パートが並んでいる。「MORE」ボタンをタップすると、発音パラメータの編集も可能だ。編集可能なパラメータはゲイン、アタック、レングス(サスティン)、ピッチ。ピッチに関してはランダマイズ(発音の度にピッチを変化させる)も設定できる。
もちろん、各パートごとにミュート(そのパートの音だけを消す)やソロ(そのパートの音だけを再生)も指定可能だ。
リズムのプログラミングはステップ入力で行う。まずはパターンボタン(P1〜P4のいずれか)を選択。次にパートを選択し、画面下部に16個並んだボタンを16分音符に見立てて、強(赤)/弱(オレンジ)/無音(グレー)のいずれかを選択する。これを各パートごとに繰り返せば、リズムパターンの完成だ。プログラムした内容を消去するには「CP」ボタンをタップすればOK。
テンポ(BPM)やシャッフル(リズムをハネさせる機能)を調整するボタンも用意されている。ただし入力方法は少々特殊で、ボタンを押しながらiPhoneを前後に傾けると数値が変更される、というもの。この入力方法は各パートのパラメータ編集でも同様だが、うまく操作するには少々慣れが必要だ。
肝心のサウンドだが、ぜひ高音質なヘッドホンで聴いてみてほしい。少々エフェクトはかかっているものの、あの独特なサウンドがほぼ忠実に再現されているのがわかるはずだ。特に808のBDのピッチを下げレングスを長めにしたときの「ブーン」という音や、ハンドクラップの音などは秀逸。思わずミキサーに接続しイコライザーなどで追い込んでみたくなるが、実物と異なりパラアウトがないのが残念だ(当然だが^^;)。
多少操作性に癖はあるが、あの名機のサウンドがたった600円で手に入るのだから、テクノ好きミュージシャンなら必携のアプリだと言えよう。
- 販売会社リンク:roventskij.net
- 参考価格:600円
- ミュージック(Music)