@appbankです。大人気ゲームパズル&ドラゴンズの生みの親山本氏への超ロングインタビューのの続きになります。
前編はこちら、パズル&ドラゴンズに業界が騒然!「次の iPhone ゲーム」を作った男、山本大介氏インタビュー。 – AppBank
こちらはゲームユーザー向けの内容になります。どうやって作られたか、どのようなゲームとして進化していくかが分かりますよ。
パズドラの情報や、攻略基本情報まとめはこちらから!
【保存版】パズル&ドラゴンズの基本・攻略情報まとめページ – AppBank
– では、パズル&ドラゴンズが生まれた背景や。ゲーム制作に関するお話をおきかせください。
山本: 私は2011年7月20日にガンホーへ入社しました。最初の1週間で1つゲームの企画を出すという指示があり、タワーディフェンスの企画を作っていました。
企画書も大体できあがっていたのですが、提出する2日前に 『Dungeon Raid』 ぽい何かが降りてきました。あのゲームは衝撃的でした。パズルかつローグ(不思議のダンジョン的なゲーム)のエッセンスを入れたのが天才!だと思いました。2011年前半はずっとあのゲームを遊んでいました。
参考: Dungeon Raid: まれに見る快作!なぜか「トルネコの大冒険」彷彿とさせる3マッチRPGゲーム。 297 – AppBank
日本の『Dungeon Raid』を作ろう!と決めて、企画書提出日の2日前からもう一つ企画を作りました。それが「パズドラ」です。
最初に出したものは横画面で遊ぶものでした。ゲームとしては面白いのですが、通勤電車の中での片手操作に合わない、女の子は横画面でゲームしている姿を見られたくないことを考えると、横画面を採用するのは難しい。
多くの iPhone ユーザーに遊んでもらうために縦画面にしました。その後、上画面に3Dダンジョンを置く画面ができあがりました。ダンジョンを進んでいく演出は、ここで生まれました。
– 話がずれますが、iPhone ゲームは既にあるゲームののエッセンスのみをゲームにした物が成立していると思います。Dungeon Raid の「ローグらしさ」がまさしくそれで、遊んでて「これはローグダンジョンだ」って思うのです。見た目も動きも全然違うのに。
山本: インターフェースが制限されているから、そうするしかないというのが理由として大きいでしょうね。
よくあるバーチャルパッドも難しいと思います。良くできた物もありますが、これをゲームで普段遊ばない方が遊んでくれるかというと難しい。
このゲームを、この要素を 、iPhone でこう遊んでもらいたい!ということが決まった時に、別のかたちになっていくのだと思います。
そもそも「iPhone はボタンの無いインターフェース」という所から始まります。なぜならホーム画面がそうだからです。操作のためのボタンが無い。だからゲームもそれに合わせる。
– パズドラのかたちができはじめたのはいつでしたか?
山本: プロトタイプは開発開始後2ヶ月で完成しました。とはいうものの、現在の物になるまでにどんどん変わっていきましたね。
プロトタイプ期間はパズル部分の作り込みをしていました。プログラマのスキルが非常に高く、パズルのルールを10パターンも用意してくれました。その他にもドロップの大きさや数を変えたり、パズル部分の面積を変更したりと、何が良いのかを、じっくりと試行錯誤しながら進めることができました。
– さまざまなパターンを用意すると「何が良いのか」を決めるのこそ大変だと思います。決め方についてもう少し教えてください。
山本: 最終的な決定は悩みきった後の勘になりますが、なるべく話しをするようにしています。開発チームとも話しますし、社内の他チームとも話します。最も頼りにしてきたのは「嫁レビュー」ですね。開発チームに既婚者が多く、プロトタイプ段階から皆それぞれの嫁さんに遊んでもらいフィードバックを共有していました。これが効果的でしたね。
普段ゲームを遊ばない人に遊んでもらい、彼らに「面白い!」って言ってもらえるまでチューニングし続けました。
例えば「パズドラ」には「ななめ移動」があります。斜め移動を甘くするとフルコンボが容易にできるため、一時的に斜め移動を廃止していました。しかし、嫁レビューを重ねるうちにドロップを自由に動かせた方が気持ち良く遊んでくれるし、とっつきやすいと考え直しました。ならばと、移動時間に制限を設けました。
ドロップの移動時間はパズル部分の基礎となる部分で、かなりこだわって作っています。コンマ1秒単位で調整しています。年末になるまでずっと調整していましたね。
– えっ?あれって4秒ちょうどとかじゃないのですか?
山本: はい。0.1秒単位で調整しています。何秒00みたいなきっちりした数字ではないですね。
– 社内でのコミュニケーションでお聞きしたいのですが、他のゲームの開発チームからも意見をもらったりしました?
山本: はい。私は第1企画開発本部 第2ディベロップメント部に所属しています。第1企画開発本部では、主にスマートフォン向けゲームアプリの開発を行っていて、現在30人います。
意見をもらうときは部内の他のチームも全員やってきて、思ったことを話してくれます。チュートリアルはこうした方が良いよとか、ここはこうみせたら良いといったような細かい話から、音楽の雰囲気など、みんな思ったことを自由に話してくれますね。
こんなに部署内の全員で意見交換ができる会社も珍しいなと思います。
– 「パズドラのここがおもしろい」って分かってくるようになってきたのはいつですか?
山本: これまでに無い3マッチパズルを作り、そのパズルが面白くなるように作って来たが、理解されるまでが難しかった。チュートリアルを入れたタイミングでそれが分かってもらえるようになってきました。
とにかく丁寧に、チュートリアルがゲームの一部分となるように作っていきました。
– 山本さんの中で3マッチのぐるぐる感でいくぞ!って決めたタイミングはいつですか?
山本: プロトタイプのパズルの作り込みの時から既に、ですね。App Store にある200くらいの他の3マッチパズルで遊びながら「これとは全く違うものを作る!」と思いながら作り込んでいきました。やるからにはコピーゲームと呼ばれたくない。「パズドラ」のゲームはこれなんだ、って言えるのは今までにないパズル部分だと思っています。
– ゲームの勘所についてもう少しだけ、利用者が遊び続けられるように工夫した所について教えて下さい。
山本: やはりこだわりはパズル部分ですね。11月になるまでドロップ数は5×6か6×7でずっと迷っていましたね。
そこで、このグルグル回していくパズルゲームができたなと思えましたね。
面白いゲームというのは、ゲームルールそのものが面白いのです。だから「パズドラ」もそうなるように、パズルの仕組みそのものが面白くなるようにこだわって作りました。
次に成長要素や達成要素、自分が遊んだ分を確認出来る要素加え、満足度を上げます。さらに長く遊んでもらうためにコレクションやソーシャル要素を仕込んで補完していきました。
– 開発期間が7ヶ月、この業界では一般的な長さですか?
山本: 一般的なアプリゲーム開発よりも長めですね。自由に作らせてもらったと思います。
運が良いことにここガンホーでも好きにやらせてもらっていますね。
私は入社後すぐに社長直轄の部署に配属され、毎週社長と話していました。
企画書を出した時から社長は「これは面白い!」って言ってくれ、社長とのミーティングでも毎回「このゲームは面白いのか」だけを確認するように質問していました。面白い社長ですね。それが年末まで続きました。
– 「おもしろいのか?」だけで何ヶ月もですか!課金やマネタイズの質問はなかったのですか?
山本: 一切ありませんでした。まず面白いゲームを作る。がガンホーの社風ですね。
私自身PSN向けの追加課金タイトルを作ったり、多くのソーシャルゲーム等で遊んでいて、良い所と悪い所を自己流で研究してきていたため、課金やソーシャルの勘所を作りながら組み込んでいました。
課金要素はゲームデザインと密接につながっています。ソーシャルや課金に入れ込むと面白くならない、面白いだけではビジネスにならない。課金ポイントですらゲームの一部にする。今回はプロデューサーとディレクター兼務だったのが良かったですね。
– えっ!それはよく分かるのですが、課金とゲームを密接につなげるとか、プロデューサーとディレクター兼務ってめちゃ大変ですよね。
山本: はい。大変です。
– 他だと担当が分かれているように見えます。普通のゲーム会社やソーシャルゲーム会社の体制だと厳しいような気が、、、
山本: そうですね。普通は分担しますよね。私も何度も迷うことがありました。そういう時に頼りにしたのが「嫁レビュー」ですね。
普段ゲームを遊ばない人や、あまりゲームを遊ばない人が「パズドラ」を遊び続けてくれるのか、意見をなるべく聞くようにしました。
パズドラのメイン音楽はイトケンこと伊藤賢治さん
– メイン音楽は「ロマンシング サ・ガ」シリーズでも有名な伊藤賢治さんですよね。
山本: 伊藤さんとは前に一度仕事をしたことがあり、それ以来たまに池袋で飲みに行くなど仲良くさせて頂いていました。
それ以降、なかなかお仕事をする機会がありませんでしたが、かなり力を入れたゲームを作るので「頼むなら伊藤さんしかいない!」という意気込みでお願いしました。忙しい中、リテイクにも応じてくれて本当に感謝しています。
– どういった音楽を作って下さいといってお願いしましたか?
山本: ゲームのイメージを見てもらって、基本はファンタジーなんだけどパズルゲームなのでポップな感じ、聞き飽きずに遊び続けられるものをとお願いしました。
そうしたらめちゃかっこいい曲がきてしまいました(笑)ゲームの目指すポップさと合わなかったため、泣く泣くリテイクをお願いしました。
逆にボス戦はイトケン節で緊張感のあるものをとお願いしたら、がっつりそのものがやってきました。ユーザーからは「もっとイトケン音楽を」と要望も多いので追加することを考えています。ご期待ください。
実力派の絵師によるカードデザイン。
– カードデザインなど、グラフィックデザインも有名な方が多いと聞いています。
山本: カードイラストは複数の方にお願いしています。
日野慎之助さんと安達洋介さんは前職からおつきあいのある方です。日野さんはティラ系、安達さんにはプレシィなどを描いていただきました。
そして安達さんのご紹介でイトウヨウイチさん、デュエルマスターズの看板イラストレーターですね。そしてこちらもカードデザインで有名な汐山このむさん。
最後に鈴木香織さん、唯一の女性デザイナーでカーバンクルなどのかわいい系モンスターを描いていただきました。
ゲームのUIも担当してくれました。非常に優秀な方で、女性ユーザーがかわいいと言ってくれるのも、彼女のデザインのおかげだと思っています。
カードデザイン、UIも何度もリテイクを重ねながら、このゲームに合うものにしていきました。
ー 複数の方のカードデザインにもかかわらず全てのカードに統一感がある。どう進めたのかが気になります。
山本: 何度もすり合わせを行いました。
パズドラの開発のここがおもしろい!
– 話は変わりまして、自分がゲーム作っていて一番楽しい所を教えて下さい!
山本: そりゃ、企画者だったらゲームの企画が降りてきた瞬間からテンションMAXですね!
初期も楽しいですね。ゲームがどんどん出来上がっていくのが分かるから。
しかし中盤はだれてきますね、調整も多いし。「パズドラ」の場合は中盤にカードイラストを進めていたのが良かった。才能のあるみなさんに自分の好きな絵を描いてもらえるのですから。刺激も多く、テンションを保つことができました。
後半の仕上げも楽しかった。
– リリース後に「パズドラ作って良かった!」って思えたうれしいエピソードがあれば。
山本: 第一は嫁がはまって遊んでくれていることです。これは絶対です。今までは私の作ったゲームでは遊んでくれなかった。
もう一つはソーシャルゲームの流れに安易に乗りたくない、iPhoneでゲームを作りたい開発者の方々にビジネスとして期待感を出せたことです。他と似たようなゲームの開発にウンザリな方はたくさんいらっしゃると思いますので、そんな時はパズドラの例を出して「ゲームゲームした企画」を通す材料に使って頂けれると嬉しいです(笑)
– パズドラ開発チームも盛り上がっているでしょうね。
山本: チームのみんなもノリノリです(笑)年始からずっと睡眠時間が短い所がんばってきたのに、もっとこういうの作っていきたい!と攻めてきますよ。
「パズドラ」は月2回のアップデートで行こうとスケジュールを組んで作っています。
– ゲーム運営について教えてください。
山本: ゲーム内イベントとしては、ダンジョンのドロップ率、コイン数上昇とスタミナ半分などがありますね。あとはメタドラダンジョンの実施など。
考えがあって実施するものもあれば、ノリで開始したりもしますね。
次にダンジョンの追加ですね。追加されるスペシャルダンジョンの難易度設定については、ほぼノリでやっています。でもボスやダンジョンには、こういうダンジョンにするといった特徴など、他との違いが出るように考えていきます。
– 今より強いダンジョンって出てきたりしますか?たとえば全キャラレベル99でも勝てない的な。
山本: 出しますよ。ただ強いだけでは勝てないものを。チームの組み合わせやリーダースキル、スキルの駆使で勝てるようなダンジョンを企画しています。
– 新モンスターの追加について教えて下さい。今のバージョンでもまだ公開されていないモンスターはいます?
山本: いますね。今の神モンスターの進化版は誰も手に入れていません。進化用のキャラが、次に追加されるノーマルダンジョンで登場するからです。
– ミスリットも進化用素材だと思いますが、あれもらっても進化できるキャラって少なくないですか?
山本: 近くセイレーンやエキドナの進化版が追加されます。ミスリットはその時の進化用素材にもなりますので手放さないように!
次のアップデートでその女の子キャラとカーバンクルの更なる進化が可能になります。その次のアップデートでは皆さんからの評判の悪いカラードラゴンを進化させます!
– まじですか!私にとっては合成要員なんですけど!
山本: (笑)これが、「パズドラ」です。ゲームは常に進化します。このキャラはハズレとか進化しないとか思わないほうが良いですよ。人気のキャラは強くしますし、思ったよりも人気のないキャラだって強くなります。
– 爆炎龍もですか?
山本: はい。
– え?あのなんとかファイター系も?
山本: はい。ありえます。
– スキルやリーダースキルも増えたりしますか?
山本: 増えます。ばらしてしまうと、「タイプ強化」というリーダースキルがやってきます。
今は火などの属性で攻撃力を強くするものがありますよね。そうではなく「体力タイプ」「バランスタイプ」「ドラゴンタイプ」など、モンスターのタイプで攻撃力を上げるリーダースキルになります。
どのキャラが進化し、これを覚えるのかというと、、、今は秘密にしておきましょう。
今後アプリのアップデートではダンジョン追加を最優先にして、ユーザーが望んでいることと、私たちがやりたいことのバランスを見ながら進めていきます。フレンド同士のメリットが強まる要素も入れていきたいですね。
– 魔法石を使う要素の追加は?
山本: 要望の多い『フレンド枠の拡張』を検討しています。今は50が最大なので、増やせるようにしようかなと。
– ユーザー対応について教えて下さい。
山本: ユーザー対応は広報ツイッターアカウントのムラコ宛に良い意見をたくさん頂いています。
サポート宛てに頂いた要望も全て読んで、次に何を導入するかを決めています。
ユーザーの皆さんからの意見はどんどん頂きたいと思っています。
他のゲームに比べて、とんでもなくご要望を反映していると思いますよ。
– 次回の大型アップデート内容について、まとめて教えて下さい!
山本: 一番大きいのはノーマルダンジョンの追加ですね。『魔王の城』の次が登場します。新しい進化素材はここから登場します。追加モンスターは、女の子キャラ、カーバンクルキャラの進化キャラですね。
ユーザーの皆様から要望の多かった、間違えてモンスターを合成してしまった、間違えて売却してしまった時への対応があります。まず、モンスターをお気に入りに登録すると、そのモンスターは売ることができなくなります。
次に、☆3以上のキャラだと「大丈夫?」と警告を出すようにします。
その次、4月末に予定しているアップデートは面白いですよ。こちらはまだ秘密で。
– 将来的にやりたいことはありますか?
山本: これは実現させたいと思っているのですが、リーダーしか連れて行けない専用ダンジョンを作りたいですね。フレンド5名で参加します。
全員リーダースキルを発動して、敵はめっちゃ強くする。爆炎龍5体だったら32倍攻撃!でも倒せないみたいな。何百万HPにして、、、
そうやってフレンドの要素がもっと面白くなるようにしたい。
– パズドラから派生する別アプリというのはありますか?
山本: 可能性は高いですね。パズル部分だけをオフラインで遊びたいという要望が非常に多いので、作ろうかと。
– 最後のひとつ前です。山本さんが一番思い入れのあるモンスターを教えて下さい。
山本: キングメタドラですね。あの絵が好きです。かわいい。次の「パズドラ」のアイコンにしたいくらいです。
経験値の設定も大分悩みました。経験値50000は思い切った数値設定だと思います。ここまで高くする気はありませんでした。
なんにせよ。ぬいぐるみにしたいくらい愛着のあるキャラです。
– 以上です。今回は長いお時間いただき、ありがとうございます!!!
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